2019年上期に劇場で観たのは109本、そのうち日本映画49本、ベストも小粒感あり。
- 1)「さよならくちびる」 力が抜けたいいオフビート感
- 2)「愛がなんだ」 原作・角田光代のドロドロ感が後半効いてくる
- 3)「新聞記者」 日本では貴重な骨太感ある社会派
- 4)「夜明け」 地味だけどしっとりしたヒューマンドラマ
- 5)「旅のおわり世界のはじまり」 黒沢清の不思議な感触の映画
2019年上期に劇場で観たのは109本、そのうち日本映画49本、ベストも小粒感あり。
蜷川実花監督、平山夢明原作。メキシコ旅行のために日給30万円の怪しいバイトに手を出したオオバカナコ(玉城ティナ)は、闇の組織に身売りされ元殺し屋のシェフ・ボンベロ(藤原竜也)のダイナーで働くことになる。そこは、スキン(窪田正孝)、キッド(本郷奏多)などの殺し屋が集まる店。そして、ボンベロの恩師ボスの一周忌がダイナーで行われる事になるが…。原作未読。蜷川実花のワタシはセンスあるでしょ風な押し付けがましい絵作りに辟易、うんざり感がつよい。「ヘルタースケルター」よりは多少マシか。物語はまあまあな感じなんだが、キャラの作りも演出も演技も酷い有様。原作はもっといいのかもしれない。全体に派手だけど退屈な映画の典型。料理が平凡で美味しそうじゃないのもかなり残念。
藤井道人監督、望月衣塑子原案。東都新聞にFAXで届いた医療系大学新設計画に関する極秘文書を、記者の吉岡エリカ(シム・ウンギョン)が担当する。一方、外務省から内閣情報調査室へ出向中の杉原拓海(松坂桃李)は妻・奈津美(本田翼)は出産目前。杉原は上司・多田(田中哲司)の元で現政権の情報をコントロールする任務で葛藤していたが、ある時、かつての上司・神崎(高橋和也)に呼び出される…。原案は未読、元TBS記者強姦事件、加計学園問題など実在の事件をモチーフにしながらの骨太な構成。海外だとこの位はフツーな新聞記者モノなんだけど、日本では貴重、リアルなピリピリ感を感じてしまう。何しろ、内閣情報調査室の情報操作が恐ろしい。シム・ウンギョンの絶妙な演技はいい。日本の女優でこの演技できる人いるのだろうか。松坂桃李も悪くないけど、内調・田中哲司の静かな悪人ぶりが凄まじい。
白石和彌監督。競輪中毒の木野本郁男(香取慎吾)は、恋人の亜弓(西田尚美)とその娘・美波(恒松祐里)と川崎から亜弓の故郷の石巻へ移り住む。末期ガンながら漁師を続けている亜弓の父・勝美(吉澤健)の家に世話になり、郁男は近所の小野寺(リリー・フランキー)の世話で印刷工場で働くが、あるきっかけで亜弓は遺体で発見される事になる…。香取慎吾のズタボロなダメ人間を演じるのだけど、それが板についていてなかなか良い。妙に不健康な太り方とか虚ろな目つきとか、何事にも雑な動作とか、こっちが本物じゃないのと思わせるほど。どこでマシな人間になるんだろうかとドキドキさせられる展開なのが面白い。ほとんどマシにならないのも凄い。白石和彌は連続して凄い映画作ってくるな。