永井聡監督。絵の才能はありながら独創的なキャラクタが描けない山城圭吾(菅田将暉)は、夏美(高畑充希)との生活のためにアシスタントを辞め漫画家の道も諦めようとしていた。その時、偶然に一家四人惨殺の事件に遭遇、犯人(Fukase)の顔を見てしまう。山城は刑事の真壁(中村獅童)、清田(小栗旬)に犯人の顔を秘密にしながら、それをキャラクタとして漫画「34」を大ヒットさせてしまうが…。オリジナル脚本。この脚本がなかなかいい流れで、予想は出来る展開と安心して観ていたが、途中まったく予想外でちょっと驚いた。漫画の内容、犯人の過去などの絡め方でラストはもうちょっと丁寧さがあってもいいと思ったけど、まあまあいいのではないだろうか。意外に惨殺シーンはないなあと前半は思ったが、スプラッタ嫌いは後半きついかも。Fukaseは俳優としては心配だったけど、セリフも少なめでハマっていたと思う。「TOKYO FANTASY SEKAI NO OWARI」の現実の時とキャラはあんまり変わらない気もした^^。
「Mr.ノーバディ」-Nobody-
イリヤ・ナイシュラー監督。郊外の自宅と義父の工場の往復を繰り返す平凡な男ハッチ(ボブ・オデンカーク)は、妻ベッカ(コニー・ニールセン)と娘サミーと息子ブレイクの四人家族、父(クリストファー・ロイド)は施設暮らし。ある時、ハッチの家に強盗が侵入する事件が起き、さらにロシアン・マフィアの年金基金を管理するユリアン(アレクセイ・セレブリャコフ)から狙われる事になるが…。かつてはXXXの猛者だけど今は平凡な生活をしている男がある事をきっかけで怒ってバンバン、という感じの、映画では有りがちな話。全体に雑だけどアクション的にはまあ面白いかな、と思ったら「ジョン・ウィック」の脚本家デレク・コルスタッドと製作デビッド・リーチだった。アクションのスタッフを確認してなかったが、殺陣まで似てる気がする。クリストファー・ロイド(BTTFのドク)82歳が最後の方にアクションやるトコだけは貴重で傑作かも^^。監督は「ハードコア」の人。
「映画大好きポンポさん」
平尾隆之監督、杉谷庄吾【人間プラモ】。祖父も有名なプロデューサーのポンポさん(声:(小原好美))のもとで働くジーン(声:清水尋也)は、15秒CMの作成をきっかけに、ポンポさん脚本の新作映画「MEISTER」の監督を任される。主演は有名俳優マーティ(声:大塚明夫)、ヒロインは新人女優ナタリー(声:大谷凜香)が決まるが…。原作コミック未読だったが、映画後に読んでみる。原作に比べると見せ場を多く作って詰め込んでいる割には、90分に収めてテンポもいい。原作そのままだったら詰まらなかったと思う、映画の方が個人的には好み。とはいえ、悪役や大きな障害が不在の真っ直ぐな展開はちょいと単調すぎか。映画業界の話も常識的でマニアックさは少ないのは残念。盛り上げ時も音楽に頼りすぎかも。一般向けで、まあ評判がいいのは納得できる出来ではある。でも「MEISTER」はとても平凡な映画な気がするが..
「幸せの答え合わせ」-Hope Gap-
ウィリアム・ニコルソン監督脚本。英国南部、海辺の町シーフォード。グレース(アネット・ベニング)とエドワード(ビル・ナイ)の夫婦はもうすぐ結婚29年。独立して家を出ている息子ジェイミー(ジョシュ・オコナー)が帰郷した週末、突然エドワードは家を出ていく事を告げるが…。ストレートに熟年離婚の話。それほどひねりは無いのだけど、アネット・ベニングのすごーくイヤな感じの繰り返し繰り返しで、ほんとーに離婚したい気持ちになる。これは男性視点だからかもしれないが。女性視点ではどう見るか分からないけど、妻側の味方する人いるんだろうか。その板挟みの息子にも同情する。内容的には、監督の実体験というのがなんとも凄い。そのいかにも居そうなイヤな感じのアネット・ベニングの演技はなかなかのもの。
「5月の花嫁学校」-La bonne epouse-
マルタン・プロボ監督。1967年、フランスのアルザス地方のヴァン・デル・ベック家政学。ポーレット(ジュリエット・ビノシュ)は経営者の夫の突然の死により経営を引き継ぐが、倒産寸前であることを知る。義姉のジルベルト(ヨランド・モロー)、シスター・マリー=テレーズ(ノエミ・ルボフスキー)と学校を続けるが、ポーレットは偶然に昔の恋人アンドレ(エドゥアール・ベール)と再開する…。1968年五月革命を背景にして、花嫁学校の人々が変化していく話…、というと面白くなりそうなんだけどイマイチ消化不良。肝心のフェミニズムへの目覚めは曖昧だし、ポーレットや生徒たちがどう変化していくのか、もうちょっと物語として続けて欲しかった。生徒たちも個性を色々つけて面白いのに活かせてないな。五月革命の影響の大きさってなかなか日本人には理解できない。
「アメリカン・ユートピア」-David Byrne's American Utopia-
スパイク・リー監督。元トーキング・ヘッズのデビッド・バーン「アメリカン・ユートピア」2018年を原案に作られたブロードウェイ・ショー…。同アルバムから5曲、トーキング・ヘッズの9曲など全21曲。デビッド・バーンはいつもアーティスティックで舞台的、社会性があってシニカルなところが好きなんだが、スパイク・リーが監督なので特にメッセージ性が強い。Black Lives Matteのメッセージを正面に押し出している。ミュージシャンやダンサーの多様性も気を使っている。 アルバムの曲と比べるとショー版の選曲の方がかなりいい。好き。舞台としては、音楽はもちろんだが、人間が縦横無尽に動く空間の使い方、大道具のように使われるライティングとか素晴らしく上手く感じる。ちなみに、個人的に生涯ベストのコンサートフィルムは「ストップ・メイキング・センス」。しかし、デビッド・バーンは69歳だが老けすぎじゃないか、声もアルバムに比べてまったく張りがない。