電子竹林:Blog

はてなダイアリーより引っ越し済み、主に映画

「ヒノマルソウル 舞台裏の英雄たち」

飯塚健監督。スキージャンパーの西方仁也(田中圭)は、1994年リレハンメル五輪の団体戦原田雅彦(濱津隆之)の失敗により金メダルを逃す。西方は4年後の1998年長野五輪を目指すが、腰の故障により代表を落選、コーチ神崎(古田新太)の要望により、聴覚障害の高橋竜二(山田裕貴)、小林賀子(小坂菜緒)たちとテストジャンパーとなるが…。長野五輪のスキージャンプの話だけど、裏方のテストジャンパーを主役にしている構成がポイント、そこはなかなか成功している。猛吹雪、試合再開をかけたテストジャンプという見せ場も上手いし、それでいながら団体金メダルも上手く演出している。全体にチープさは残るものの、よくできている。原田、舟木とか懐かしい。とはいえ、時代的に素直にオリンピックを楽しめる感じではないことは確か。来年の北京冬季五輪を狙った企画なのだろうけど。

http://hinomaru-soul.jp/

「夏への扉 キミのいる未来へ」

三木孝浩監督、ロバート・A・ハインライン原作。1995年東京、若きロボット開発者・高倉宗一郎(山崎賢人)はラズマ蓄電池の開発に取り組んでいた。友達は亡き父の親友松下の娘・璃子(清原果耶)、猫のピート。しかし、共同経営者の松下和人(眞島秀和)、婚約者の鈴(夏菜)の裏切りに会い、すべての研究を失った宗一郎は30年後の2025年までコールドスリープに入る決心をするが…。やや日本向けなトコはあるが、原作に素直に作りながら適度に刈り込んで、物語もちゃんと整っている。原作未読の日本人なら、ミステリー的にも楽しめると思う。猫のピートも、ロボットのピート(藤木直人)も、まあよし。そもそも日本受けしながら海外で評価低いのは、全編のロリコンっぽさじゃないかと思っているのだが、そこはむしろ強め。リッキィ=璃子(清原果耶)愛100%。でもリッキィが11歳だけど 璃子は17歳だからギリギリOKなのか。田口トモロヲ原田泰造、浜野謙太ともに脇役としては悪くない。SFとしては古臭くなっている部分を、適度に時代に合わせてる。64年前の原作では、ワープロ、CAD、家事ロボット、冷凍睡眠、タイムマシンが同じようなレベルで語られているのは今考えると面白い。この原作が元ネタになっている「バック・トゥ・ザ・フューチャー」だが、映像表現的にそこから影響を受けている印象もある。初のケン・リュウの実写化「Arc アーク」 、初の「夏への扉」の実写化ともに日本だけど、日本人用に内向けに作られていて、海外へ出せるコンテンツになっていないのは残念な限り。

https://natsu-eno-tobira.com/

「Arc アーク」

石川慶監督、ケン・リュウ原作「円弧(アーク)」。生まれたばかりの息子を置いて両親の元を離れ放浪生活を続けたリナ(芳根京子)は、偶然に出会ったエマ(寺島しのぶ)の会社で働くことになる。リナは、エマの遺体を保存するボディワークという仕事を手伝い、やがてエマの弟・天音(岡田将生)が研究する不老不死の処置を受ける人類最初の人間となるが…。ケン・リュウは全般的に好きだが、この原作となったのは短編でかなり想像力を膨らませないと見せ場は無いし、映画としては難しい気がしていた。結果的にはケン・リュウの、普遍的なザラついた生活感というかリアル感は薄く単に日本のどっかのドラマにしか見えない。そこにあるSF的な、神のような達観した視点もまるで感じられない。芳根京子の演技で、最初の5分でそこは諦めた。寺島しのぶもイマイチ。前日に原作を再読してしまったのでどうしても比較になってしまうのだが、なんとも残念。後半の島の設定も凡庸、普通のドラマとしても面白みは薄い。そもそも日本には100歳以上が8万人いるわけで、137歳の人間では未来感ないよなあ。倍賞千恵子は150歳ぐらいに見えたが。

https://wwws.warnerbros.co.jp/arc-movie/

「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」

江口カン監督、南勝久原作。伝説の殺し屋ファブル(岡田准一)は相棒ヨウコ(木村文乃)と共に殺しをせずに一般人として暮らし、田高田(佐藤二朗),、ミサキ(山本美月)の会社で働いていた。一方、裏で若者を餌食にするNPO代表・宇津帆(堤真一)は弟をファブルに殺されていた。その部下・鈴木(安藤政信)は元殺し屋、そして車椅子のヒナコ(平手友梨奈)はかつてファブルが救えなかった少女だった…。「ザ・ファブル」 の続編。主要メンバーは同じで基本路線は同じ。新たな敵、救えなかった少女という明確さがいいのか、物語、演出は前作よりちょっと洗練されている気がする。アクションは派手に上手く見せ場を作っているのがいい、特に足場のシーンはかなりよく出来ている。生身のスタントのリアルさは楽しいし、格闘シーンもいい見どころ。宇津帆、鈴木の背景などはちょっと薄いかなという気もする。

https://the-fable-movie.jp/

「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」-A Quiet Place Part II-

ジョン・クラシンスキー監督。音に反応して襲う怪物により荒廃した世界、エヴリン・アボット(エミリー・ブラント)は夫リー(ジョン・クラシンスキー)を失い、耳の不自由なエメット(キリアン・マーフィ)、息子マーカス(ノア・ジュプ)、生まれたばかりの赤ん坊を連れ、新た居場所を探すが…。全米ポップコーン食べ残し率No.1「クワイエット・プレイス」の続編。異変のDAY 1から始まり、今回もかなりの緊張とスピード感の連続。心底疲労したが面白い。そして続編もまだまだありそう、「エイリアン」みたいにシリーズ化しそうな雰囲気。そもそも原題が「..PART II」だし。世界観だけ残し、違う展開するのもアリな感じ。今回は息子と娘の子供たちが主役の物語として上手く展開させている。

http://quietplace.jp/

「RUN ラン」-Run-

アニーシュ・チャガンティ監督。子供の頃から病弱で車椅子生活のクロエ(キーラ・アレン)は、郊外の一軒家で母ダイアン(サラ・ポールソン)と暮らしていた。クロエはホームスクールを続けながら地元ワシントン大学を目指していたが、ある時、母に不信感を感じ、自分の新しい薬を調べようとするが…。画面だけで展開する「search サーチ」の監督、一発ネタってところは同じ感じ。ほとんど母娘二人の展開で低予算な感じなのも同じ。物語的にはもっと二転三転するアイデアが欲しかったが、意外に広がりが少ない。母側の心理ももっと突っ込んでよかったのに。ラストの決め方もその後の話も好みではなかった、残念。これはもっと面白くなると思ったんだがなあ。カメラワークや編集など、随所にヒッチコックの影響がある。

http://run-movie.jp/

「ベル・エポックでもう一度」-La Belle Epoque-

ニコラ・ブドス監督。昔は人気イラストレータだったヴィクトル(ダニエル・オートゥイユ)も、今は妻マリアンヌ(ファニー・アルダン)からも見放された日々。息子は父を勇気づけようと、親友アントワーヌ(ギョーム・カネ)が始めた“タイムトラベルサービス”をプレゼントする。ヴィクトルは、指定した1974年5月16日のリヨンのカフェそのままのセットで運命の女性と出会うが、それはアントワーヌの恋人マルゴ(ドリア・ティリエ)だった…。過去を体験するサービス、って今時ならVRなどSF的にやりそうなのをセットでやるってアナログさが、映画向きな設定で面白い。五月革命から6年後、1974年のリヨンの自由な雰囲気はいいし、恋愛関係が二重に複雑に絡んだ構成もなかなか面白い。フランス映画っぽいかも。熟年夫婦という共通点はあるが「幸せの答え合わせ」とはかなり違う。劇中曲「誘惑のブギー」 Yes Sir, I can Boogie (BACCARA)はディスコブームの頃だから、もうちょっと後の曲じゃないの?? と思って帰ってから調べたが1977年だった。まあ、細かいとこなのか。1974年5月16日ってなんでもない日に思えるが、ポンピドゥーの後任を決める大統領選の、第一投票日がジスカール・デスタンが首位、ジスカール・デスタンと左翼統一候補ミッテランの第二投票日によりミッテランが勝つ三日前、という象徴的な時なのかも。

https://www.lbe-movie.jp/