電子竹林:Blog

はてなダイアリーより引っ越し済み、主に映画

「護られなかった者たちへ」

瀬々敬久監督、中山七里原作。震災で家族を失った利根泰久(佐藤健)は、避難所で遠島けい(倍賞美津子)、カンちゃん(石井心咲)と知り合い、助け合う。利根は放火事件を起こし9年後に出所。その頃、仙台で全身を縛られたまま放置され餓死する事件が発生。宮城県警捜査一課の笘篠(阿部寛)、蓮田(林遣都)は被害者の勤める福祉事務所を訪れ、容疑者を知るために円山幹子(清原果耶)のケースワーカー業務に同行するが…。原作は「さよならドビュッシー」 などの中山七里、原作未読。調べると人物の関係性は微妙に違うみたい、カンちゃんが男子だとかも違う。中山七里はドンデン返し期待が高いようだけど、これはミステリーっぽさも薄い刑事モノで社会モノ。震災と生活保護というトコで重い内容だけど、社会性もあるのは良い。阿部寛「麒麟の翼 ~劇場版・新参者」 などの新参者シリーズそのままでイメージが重なってしまうのはマイナス面なんじゃないかなあ。全体に暗いトーンで監督らしい。

https://movies.shochiku.co.jp/mamorare/

「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」-No Time to Die-

キャリー・ジョージ・フクナガ監督。ジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)はマドレーヌ(レア・セドゥー)と引退生活を送っていたが、ヴェスパーの墓でスペクターの襲撃に遭う。それをきっかけに友人で元CIAフェリックス(ジェフリー・ライト)の依頼、元スペクター首領ブロフェルドの誕生日パーティに潜入し科学者を救出を実行するが、それは生物兵器ヘラクレス、さらにマドレーヌの過去と関係するサフィン(ラミ・マレック)へと繋がっていた…。ダニエル・クレイグの最後の007ということで感慨深い、「007 カジノ・ロワイヤル」からもう15年か。ダニエル・クレイグもかなり爺さんっぽくなっても当然か。最後ってことでもう色々なことをやってくれてるトコが楽しい。展開とか、当然のように面白い。そしてしみじみと余韻が残るのは007っぽくないが、そこがいい。ところで、黒人の新007のノーミ(ラシャーナ・リンチ)より、CIAのパロマ(アナ・デ・アルマス)の方が予告編で出番多いのは、なんというかハリウッド的だな。中途半端な日本趣味はちょっと気になる。

https://www.007.com/no-time-to-die-jp/

「空白」

吉田恵輔監督脚本。親のスーパーを継いだ店長・青柳直人(松坂桃李)は、中学生の添田花音(伊東蒼)の万引きを疑い追いかけるが花音は自動車事故に遭う。花音の父で漁師の充(古田新太)は、花音の無実を証明しようとモンスター化していくが…。監督によるオリジナル脚本。不幸な事故が起こす連鎖、それぞれの人が何か問題あるがそれほど悪でもない、ってトコがリアル感があっていい。この中の誰かにおそらく自分も当てはまる、と思わせる。担任の趣里、充の元妻の田畑智子、運転者の母・片岡礼子、充の助手・龍馬の藤原季節と脇役もそれぞれいい感じだった。古田新太のオヤジぶりが凄くいい。古田新太は初主演かと思ったら、2回目だった。地味な映画だけど好き。吉田恵輔監督は、初期の「純喫茶磯辺」から「麦子さんと」 「ヒメアノ~ル」 「愛しのアイリーン」 と過激になったと思うと、「BLUE ブルー」 と、今回社会派と多彩に見せてくるけど、ハズレがないのが凄い。

https://kuhaku-movie.com/

「MINAMATA ミナマタ」-Minamata-

アンドリュー・レビタス監督。1971年、ニューヨーク、かつての沖縄戦などで有名な写真家ユージン・スミスは酒びたりの日々だったが、ある日、富士フィルムのインタビューでやってきた通訳のアイリーン(美波)から水俣病のことを知る。ユージンは、ボブ(ビル・ナイ)のライフ誌の仕事として水俣へ向かい、マツムラタツオ(浅野忠信)、マツムラ・マサコ(岩瀬晶子)、キヨシ(加瀬亮)と出会う。そして、チッソ工場の社長ノジマ・ジュンイチ(國村隼)と会うことになるが…。中学時代の好きな写真家がブレッソン、キャパ、大道、土門、ときて五番目がユージン・スミスだったので、感慨深い映画ではある。ミノルタのカメラも現像シーンも懐かしい。当時の知識とちょっと違う展開だけど、まあ映画にするにはしょうがない部分もあるだろう。やはり「入浴する智子と母」がクライマックスにくるんだなあ。そこへの盛り上げは見事で感動的だった。水俣市が後援拒否したそうだが、公害病という言葉も、なんか遠く感じる今だからこそ意味がある映画じゃないのかな。ところで、アイリーンが最初に連れてきたギイチって誰だ?? 思い当たる人がいないが。

「クーリエ 最高機密の運び屋」-The Courier-

ドミニク・クック監督。1960年、東欧などをまわる英国人セールスマンのグレヴィル・ウィン(ベネディクト・カンバーバッチ)は、ソ連参謀本部情報総局GRUの高官ペンコフスキー(メラーブ・ニニッゼ)からの機密情報を運ぶ任務を、MI6のエミリー(レイチェル・ブロズナハン)たちから依頼される。グレヴィルはソ連に飛び、第一書記フルシチョフの不安を持つペンコフスキーと接触し、クーリエの仕事を始める。そして、1962年10月、キューバ危機が勃発するが…。歴史、政治モノとしても面白いし、機密情報運び屋のカンバーバッチ、その熱演が見どころかな。緊張感はなかなかいいし、ラストにかけてめちゃ感情移入できる展開。「13デイズ」も一緒にみると、キューバ危機の狂気という、時代背景がよくわかるかも。

https://www.courier-movie.jp/

「殺人鬼から逃げる夜」-Midnight-

クォン・オスン監督脚本。聴覚障害のギョンミ(チン・ギジュ)は、やはり耳が聞こえない母(キル・ヘヨン)と暮らし、お客様相談センターで手話を担当していた。ある夜、ギョンミは、連続殺人鬼ドシク(ウィ・ハジュン)がソジュン(キム・ヘユン)を襲う事件現場に遭遇し、ドシクに追われることになる。さらにソジュンの兄で元海兵隊員のジョンタク(パク・フン)も妹を探していたが…。設定自体はそれほど新鮮ではないが、ここで聞こえる、聞こえない、手話が分かる、分からないを組み合わせて作るサスペンスがとても巧みで感心した。一晩での出来事で、そのスピード感もいい。人気のない住宅地、繁華街と舞台展開も巧み。主人公に母、被害者、その兄と絡ませて、それぞれの欲望と葛藤のズレを使った展開させ方が非常に上手い。特にラストの決断はなかなか意外性があって、見事な展開。初監督と思えない手腕。しかし韓国、連続殺人鬼多すぎだろう。

https://gaga.ne.jp/satujinki/

「総理の夫」

河合勇人監督、原田マハ原作「総理の夫 First Gentleman」。財閥の御曹司だが鳥類学者の相馬日和(田中圭)、妻は直進党党首の相馬凛子(中谷美紀)。凛子は民心党党首・原久郎(岸部一徳)との連立により総理大臣になる。日和は広報の富士宮あやか(貫地谷しほり)に監視されたり、生活が一変するが…。原田マハが原作、ってとこに興味があったのだけど物語はまあまあ良かった。単なる政治モノだけで終わらないのはさすがと思った。作りは日本的なちょいとチープなとこもあるけど嫌いじゃない。伊藤るい(松井愛莉)、阿部久志(米本学仁)の絡め方も悪くないし、最後のまとめ方は上手い。ちょっとマニアックだけど、ロケ地に日本の近代建築20選、八王子の大学セミナーハウス本館が使われているのが注目だった。内部も壁や窓の傾斜からみて本物の内部だと思う。

http://first-gentleman.jp/