レオス・カラックス監督。人気スタンダップコメディアンのヘンリー(アダム・ドライバー)、オペラ歌手のアン(マリオン・コティヤール)は恋人どうし。やがて二人の間にアネットが生まれ、あるとき、その不思議な才能に気が付くが…。ロン&ラッセル・メイル兄弟「スパークス」のスタジオアルバムの物語が原案、らしいが内容はまるで知らなかった。ミュージカルとしてずっと展開すると思いきや、途中から風向きが変わり、風変わりな、ダークな展開をしていく。ハリウッド的、一般的にはハテナな展開だろうが、でもカラックス好きにはおすすめできるの。個人的にはダークというよりは、人物関係などシェークスピアっぽいと思った。「汚れた血」が1986年だから、今の人には知られていない監督だろうなあ。水原希子の登場は驚かないが、古館寛治が突然出てくるのはちょっと驚いた。
「モービウス」-Morbius-
ダニエル・エスピノーサ監督。医師のマイケル・モービウス(ジャレッド・レト)は、幼いころから血液の難病で苦しみ、同じ病のマイロ(マット・スミス)のためにも、コウモリの血清を投与する実験を自分の体で行う。実験は成功するが、超人的な能力の代わりに血を渇望するようになる。同僚の医師マルティーヌ(アドリア・アルホナ)はマイケルの変化を心配し、またNYで全身の血を抜かれるという事件が続発していくが…。スパイダーマンのヴィランの誕生譚なんだが、まあまあ面白いし映像的にもいいのだけど新鮮さはちょっと薄いかなあ。アクション中心で、善悪の葛藤というものは弱い感じ。脚本のせいだと思うが。ジャレッド・レト は「スーサイド・スクワッド」などDCコミックでのジョーカー役もやってるのに、マーベルではモービウスとは、これはOKなのか?、と思っていたらマイロの家にジョーカーっぽい絵が飾ってあるのはジョークなのか^^。wikipediaで知ったのだが、米国コミックス倫理規定委員会って吸血鬼の登場を制限しているんだ、驚き。
「ベルファスト」-Belfast-
ケネス・ブラナー監督脚本。北アイルランドのベルファスト、9歳のバディ(ジュード・ヒル)は母(カトリーナ・バルフ)、父(ジェイミー・ドーナン)、兄(コリン・モーガン)との四人暮らし。近所には祖母(ジュディ・デンチ)、祖父(キアラン・ハインズ)もいる。平和な日々だったが、1969年8月15日、プロテスタントの武装集団がカトリック住民への攻撃を始め、分断がおこるが…。ケネス・ブラナーの自叙伝的作品、地味だがしっとりとしたいい映画。緩急もあって、テンポもいい。白黒の映像も効果的。俳優陣もアイルランド系で集めているので言葉もリアルなんだろう(まるで分からないけど)、ジュディ・デンチだけは母親がアイルランド出身だけど。「チキ・チキ・バン・バン」(イアン・フレミングが原作で、ロアルド・ダールが脚本の子供映画ってすごくない?)の映像がスクリーンで見られたのは嬉しい、カラーだったし。
「アンビュランス」-Ambulance-
マイケル・ベイ監督。アフガニスタンからの帰還兵ウィル(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世)は、妻の病気の治療のために、兄ダニー(ジェイク・ギレンホール)の犯罪に手を貸す。それは3200万ドルの銀行強盗だったが、警察に追われることになり救急車で逃走するが、そこには救命士キャム(エイザ・ゴンザレス)と瀕死の警官がいた…。ひたすら銃撃戦とカーチェイスの連続、とにかくカメラワークが疲れる。頭痛くなった。ドローンなど使った映像が時々芸術的な動きを見せてくれるのはいい。ジャンプする車の下をドローンがくぐり、後続車の上をカスめるショットとか驚く動きを見せてくれる。まあアクションはなかなかなんだが、脚本はイマイチだな。なにしろ人物像が薄いのが難点だし、動機も弱い感じ。
「ナイトメア・アリー」-Nightmare Alley-
ギレルモ・デル・トロ監督、ウィリアム・リンゼイ・グレシャム原作「ナイトメア・アリー 悪夢小路」。スタン(ブラッドリー・クーパー)は偶然にブルーノ(ロン・パールマン)、コートリー(ウィレム・デフォー)たちのカーニバルの一座に加わわる。ジーナ(トニ・コレット)とその夫から読唇術を覚えたスタンはモリー(ルーニー・マーラ)とカーニバルを離れ、やがて有名興行師となる。そしてスタンは、リリス・リッター博士(ケイト・ブランシェット)と知り合い、グリンドル(リチャード・ジェンキンス)の仕事を引き受けるが…。意外に超自然なとこは無しなサスペンス。そこはデル・トロらしくないかなと思ったが、原作があるからなあ。人間の業がドロドロな、最後の最後が強烈で、後味の悪さが凄い。そこが好きだけど、多分見る人は選ぶと思う。ケイト・ブランシェット、トニ・コレット、ルーニー・マーラと女優陣がいいなあ。
「ガンパウダー・ミルクシェイク」-Gunpowder Milkshake-
ナボット・パプシャド監督脚本。暗殺組織ファームのサム(カレン・ギラン)は、母スカーレット(レナ・ヘディ)も殺し屋だが15年前にサムを置いて失踪していた。サムは連絡係ネイサン(ポール・ジアマッティ)の命令でフォームの金を持ち逃げした男を狙うが、その娘エミリー(クロエ・コールマン)が人質になっていることを知り助ける。またサムが殺した男の父ジム・マカレスターがサムを狙い、ヴァージル(アダム・ナガイティス)、フローレンス(ミシェル・ヨー)、アナ・メイ(アンジェラ・バセット)の図書館に逃げ込むが…。まあまあ面白いが、スピード感とドンパチで誤魔化している感じか。脚本も穴が多いが、まあ、それほどは気にならない。世界観は、「ジョン・ウィック」をかなりパクっている感じ。それでも男社会に対するメッセージ性は明確。監督は男だけど。出てくる男はぜんぶ暴力的でバカ。出てくる女はぜんぶ暴力的でちょっとマシって、ってトコか。全体には、ちょいやりすぎ感はあるが。