電子竹林:Blog

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「GO」

金城一紀 講談社。第123回直木賞受賞作。主人公の杉原は、元在日朝鮮人で現在は在日韓国人(前者は北朝鮮国籍で後者は韓国国籍)。中学まで朝鮮学校に通い、今は普通高校に通う高校生。この設定からも判る様に、自分のアイデンティティを求める欲求が物語の根底にあり、ストーリに厚みを加えている。庄司薫的世界のおもはがゆい恋愛感を感じるし、村上春樹的な冷めた感情もある。不思議な面白さはあるけど、ちょっと粗削り。父親の設定である、小学校卒、元日本ランカーのボクサー、パチンコ景品交換所を営み、たまにはニーチェを暗唱するなんて人間はかなり面白いのだけど、全体の流れの中では浮いてしまっている気がする。