電子竹林:Blog

はてなダイアリーより引っ越し済み、主に映画

「ルノワール」

早川千絵監督脚本。1980年代、11歳のフキ(鈴木唯)は母(石田ひかり)と父(リリー・フランキー)の3人家族。父は闘病中、母は仕事に忙しく、フキは一人で行動していたが…。デビューから2作連続でのカンヌ出品ってのが驚き。前作「PLAN 75」のかっちりしたスタイルとはまるで違って、子供主演のオフビートな感じの作品。最近では「こちらあみ子」みたいな印象、こっちの方がヒューマンドラマっぽさは強いけど。監督は相米慎二の「お引越し」からの影響を書いていたけど、確かにかなり強い影響を感じる。相米好きとしては、このままのスタイルで行ってくれると嬉しい。鈴木唯も田畑智子みたいな女優になって欲しい。「お引越し」と言えば、奥寺佐渡子の脚本デビュー作か。1980年代の子供らしいエピソードの超能力、予言、テレパシー、おまじないも面白いし、そこに伝言ダイヤル、金属バット殺人、連続幼女誘拐殺人などが出てくるのも上手い。「ライディーン」で踊るのかと誰かが書いていたが、1980年代初めから中盤あたりはディスコでかなり「ライディーン」がかかっていた。あとリリー・フランキーの病人っぷりが立派。

https://happinet-phantom.com/renoir/

「28年後...」-28 Years Later-

ダニー・ボイル監督、アレックス・ガーランド脚本。ロンドンのパンデミックから28年後、英国は海外諸国から完全に隔離され、ジェイミー(アーロン・テイラー=ジョンソン)と12歳の息子スパイク(アルフィー・ウィリアムズ)たちも、本土から離れた海の島で暮らしていた。ある時、ジェイミーとスパイクはアイラ(ジョディ・カマー)の病気のために本土へ渡り、医者であるケルソン博士(レイフ・ファインズ)と出会うが…。「28日後…」、「28週後…」- 28 Weeks Later- 、に続く三作目。今回の「28年後...」自体が三部作って噂だったが、ホントに登場人物がやっと揃ったぐらい。最後にやっとジミー・クリスタル卿(ジャック・オコンネル)が登場。それでも、スピード感ある展開で引っ張ってくれ、見せ場も多く、映画自体のパワーは強い。ダニー・ボイルの監督らしいところ。前作と違って女性陣が弱いのがちょっと寂しい。でも、一作にまとめられるんじゃなかなとは思うが。

https://www.28years-later.jp/

「リライト」

松居大悟監督、上田誠脚本、法条遥原作。尾道の高校3年生、美雪(池田エライザ)は夏に転校してきた保彦(阿達慶)が300年後からタイムリープしてきた未来人であると告げられる。美雪は保彦に恋をし、彼が現代へ来るきっかけとなった小説を書くことを誓う。10年後、美雪は作家となり過去から来る自分のために完成した小説を手に待つ。また、酒井茂(倉悠貴)は10年目のクラス会を開催、文学少女の雨宮友恵(橋本愛)、美雪の友人・林鈴子(久保田紗友)たちを集めるが…。原作未読。これは、かなりのタイムリープ、ループマニアのための映画かもしれない。単なる「時をかける少女」のオマージュかと観ていたが、その二転三転四転ぶりは痛快。その大胆な物語の構造についていくのでやっとだった。「時をかける少女」/「タイムトラベラー」から「サマータイムマシン・ブルース」まで、さまざまな小ネタの差し込み方も楽しい。脇役どころか、誰も彼もがメインあるいはジョーカーになってしまって、一体全体、この物語の主人公は誰なんだろう、と考えてしまった。

https://rewrite-movie.jp/

「見える子ちゃん」

中村義洋監督、泉朝樹原作。ある日から霊が見えるようになった四谷みこ(原菜乃華)は、見えないフリを続けることで普通の生活を続けていた。親友のハナ(久間田琳加)にも異変があり、産休に入った担任・荒井先生(堀田茜)の代理、遠野先生(京本大我)には邪悪な霊がついている。みこは、生徒会長の昭生(山下幸輝)やユリア(なえなの)とともに悪霊を払おうとするが、過去に事故があり悪霊が集まるという学園祭の日が近づいてくる…。原作を多少読んでいたので、パスしようかと思ったけど中村義洋で評判いいそうで観ることに。原作のエロ、コメディ、強いホラー感は薄く、設定は使っているけどイメージはかなり違う、上手くまとまった青春ホラー映画と言える。ラストまでにいろいろと隠されている謎は上手いな。二段階なトコもいい。原菜乃華久間田琳加ともにいいキャラだった。

https://movie-mierukochan.jp/

「Mr.ノボカイン」- Novocaine -

ダン・バーク+ロバート・オルセン監督。銀行の副支店長ネイト(ジャック・クエイド)は、生まれながらの無痛症であり、怪我がないように慎重に暮らしていたが、ある時、サイモン(レイ・ニコルソン)をリーダーとする銀行強盗が発生、親しくなった新人の同僚シェリーが人質に取られる。ネイトは、親友のロスコー(ジェイコブ・バタロン)の助けを借りながら、強盗団を追うが…。ノボカインとは局所麻酔薬剤の名前、この無痛アクションがものスゴイというか、かなりイタイ。そこがひたすら見どころだけど、かなりイタイ。それだけでもなく、恋愛ものとしても、かなりグっとくるものがあるのが素晴らしい。主演のジャック・クエイドはドラマ「ザ・ボーイズ」の人、なんか性格的に似ている気もする。レイ・ニコルソンはジャック・ニコルソンの息子だが、これも「シャイニング」っぽいサイコさをだしている遊びが面白い。

https://eiga.com/movie/103437/

「国宝」

李相日監督、吉田修一原作。花井半二郎(渡辺謙)は、父親を抗争で亡くした俊介(横浜流星)を、跡取り息子の喜久雄(吉沢亮)とともに兄弟のように歌舞伎役者として育てていた。ある時、事故にあった半次郎の代役を、俊介ではなく喜久雄を指名することになるが…。原作未読。これは、なかなか良かった。俊介と喜久雄の運命が、逆転、逆転、さらに逆転する物語の流れは怒涛のようなスピード感で爽快。撮影はソフィアン・エル・ファニ。座席からの視点で作られている歌舞伎の舞台を、あえて超クロースアップを多用して、美しさの陰にある努力を描きだす映像は日本人ではなかなか出ない感覚。歌舞伎の世界を綺麗にまとめず、ドロドロとさせた描き方はいいな。原作では分からないが、最後の方はかなり端折って終わらせている感じ。それはまあしょうがないだろう。竹野(三浦貴大)などのちょっとした脇役もいいし、なにより万菊(田中泯)は圧倒的な存在感があった。演目は藤娘、娘道成寺曽根崎心中、鷺娘など。歌舞伎を知らなくても楽しめる。

https://kokuhou-movie.com/

「ドールハウス」

矢口史靖監督脚本。佳恵(長澤まさみ)と看護師の夫・忠彦(瀬戸康史)の夫婦は、5歳の娘・芽衣を事故で亡くすが、骨董市でみつけた日本人形により元気を取り戻していく。しかし、新たな娘・芽依(本田都々花)が生まれたことにより人形は忘れられ、芽依が5歳になると奇妙な出来事が起き始める…。矢口史靖監督は、ドラマ版「学校の怪談」はあるが、本格的なホラーは初めてだと思う。それもオリジナル脚本というのは偉い。典型的な人形ホラーな始まりだが、展開が早い。時間もどんどん進み、人気人形師、人間供養の寺、警官などが絡んで「リング」 的な展開になって、物語も深くなっていく。そのスピード感はなかなか良かった。長澤まさみはホラー向きじゃない気もしていたがが、まあまあ悪くなかった。呪禁師役の田中哲司が良かったな。しかし、日本人形は怖い…。

https://dollhouse-movie.toho.co.jp/