電子竹林:Blog

はてなダイアリーより引っ越し済み、主に映画

「サウンド・オブ・サイレンス」-Sound of Silence-

アレッサンドロ・アントナチ+ダニエル・ラスカー+ステファノ・マンダラ監督。歌手を目指しニューヨークで暮らすエマ(ペネロペ・サンギオルジ)は、父の入院の知らせを受け、恋人のセバ(ロッコ・マラッツィタ)とイタリアへ向かう。父は急に暴れ出し母を殺しそうになったという。エマは実家に泊まり、父の隠し部屋で古いラジオを見つけるが、流れた音楽を切ると何かの気配を感じたが…。予告編からは、光を消すと何かが現れる「ライトオフ」の、サイレント版みたいな印象だったのだが、微妙に違った。というか、設定がかなり雑で、それゆえに背景などもまったく面白味がない。怖くなる要素はあるんだけど、まったく上手くいってない。最後のエピソードはまったく蛇足。3人で監督やっているようだけど、その協業が上手くいってないで、3人が勝手に作って繋げただけの感じがする。3人は短編ホラーを作っている監督ユニット「T3」。

https://sound-of-silence.jp/

「ニューヨーク・オールド・アパートメント」-The Saint of the Impossible-

マーク・ウィルキンス監督、アーノン・グランバーグ原作「De heilige Antonio」。ニューヨーク、不法移民として暮らすベルー人のデュラン一家、母ラファエラ(マガリ・ソリエル)はウェイトレス、双子の息子ティト(マルチェロ・デュラン)とポール(アドリアーノ・デュラン)は配達員として働いていた。ラファエラは知り合いとデリバリーの仕事を始め、ティトとポールは語学学校でクロアチア人のクリスティン(タラ・サラー)と出会うが…。街の中で透明人間として扱われる、不法移民の主人公たちからの視点というのが新鮮で、いろいろなエピソードが面白い。街の残酷さと同時に、ささやかな楽しみ、家族の絆などなどの描写が心に響く。NYの街の描写も、自然でありながら、普段とは違う視点を感じる。ラストの方の展開は、のんびりしながらも緊張感があり不思議な感覚。長編初監督作品。

https://m-pictures.net/noa/

「哀れなるものたち」-Poor Things-

ヨルゴス・ランティモス監督、トニー・マクナマラ脚本、アラスター・グレイ原作。ベラ(エマ・ストーン)は自ら命を断つが、ゴッドこと外科医ゴドウィン(ウィレム・デフォー)により胎児の脳を移植される。医学生のマックス(ラミー・ユセフ)はベラが成長する過程を記録する仕事を任されるが、ベラに惹かれ結婚。しかしベラは、弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)と駆け落ちし、リズボンへの旅に出るが…。2023年ベネチアで金獅子賞、R18+。「ロブスター」、「聖なる鹿殺し」とヘンな作風の印象の監督だが、今回はそれを超えて奇妙な話。それでも人間が成長し、世の中というモノを認識し、偏見や差別や自由や平等を体験し生き抜いていく、人生そのままを描いているようで、不思議なタッチの哲学的な映画。フェミニズムの香りもかなりする。エマ・ストーンは200%ぐらい満喫できる、過剰なほどに満喫できる。観客に年寄りが意外に多かったが、みんな寝ていた。合わなかったんだろうな、面白かったのに。

https://www.searchlightpictures.jp/movies/poorthings

「ビヨンド・ユートピア 脱北」-Beyond Utopia-

マドレーヌ・ギャビン監督。1000人以上の脱北者を支援してきた韓国のキム・ソンウン牧師が、幼児2人と老婆を含む5人家族の脱北を手伝うドキュメンタリー。北朝鮮と中国の国境から、ベトナムラオス、タイを経由し韓国へ亡命するまで。2023年サンダンス映画祭USドキュメンタリー部門観客賞。キム牧師、脱北者、ブローカーにここまでリアルに密着できたのは奇跡かも。怪しいブローカーに命を預けながらの綱渡りな旅に震える。アフガニスタンからの亡命の「FLEE フリー」といい、亡命モノは心に響くものがある。脱北しながらもキム・ジョンウンを信じる祖母の姿がちょっと衝撃的。あと、脱北には、コロナの影響も大きいんだな。

https://transformer.co.jp/m/beyondutopia/

「サン・セバスチャンへ、ようこそ」-Rifkin's Festival-

ウッディ・アレン監督。ニューヨーク、売れない作家で大学の映画学教授モート・リフキン(ウォーレス・ショーン)は、妻スー(ジーナ・ガーション)とともにスペインのサン・セバスチャン映画祭にやってくる。しかし、スーは広報を担当するフランス人監督のフィリップ(ルイ・ガレル)に夢中。モートはストレスで病院へ行くが、そこでドクター・ジョー・ロハス(エレナ・アナヤ)と出会う…。「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」以来の久しぶりのウディ・アレン。前作と同じ映画業界が舞台。クラッシックな名作映画のオマージュは楽しい。フェリーニ「8・1/2」オーソン・ウェルズ「市民ケーン」ゴダール勝手にしやがれ」、イングマール・ベルイマン「第七の封印」などなど、知らないとイマイチかも。面白いところはあるんだけど、もうちょっとちゃんとオチをつけて欲しかったな。

https://longride.jp/rifkin/

「笑いのカイブツ」

滝本憲吾監督、ツチヤタカユキ原作。大阪、16歳のツチヤ(岡山天音)はおかん(片岡礼子)と住みながら、テレビの大喜利番組でレジェンドになるためにネタを考え続けていた。6年後、ツチヤはお笑い劇場の作家見習となるが、非常識な行動が続き失敗。ラジオのハガキ職人としてネタを投稿し、ベーコンズの西寺(仲野太賀)に誘われ上京することになるが…。笑いに取り憑かれ、5秒に一回ネタを作るという、凄まじい生活。これがなかなか面白い。演じる岡山天音のボサっとしながらも、迫力がある演技はいい。とはいえ、原作は本人の私小説で、これがリアルと知っていると、どこか笑えない自分がいる。100%フィクションだったら楽しめるんだけどな。脇役のミカコ(松本穂香)、ピンク(菅田将暉)はキャラ的にはいいんだけど、物語をドライブする役でもなく浮いている気もする。まあ、全体には展開も演出もいいし、滝本憲吾監督、長編商業映画デビュー作としては立派かもしれない。

https://sundae-films.com/warai-kaibutsu/

「カラオケ行こ!」

山下敦弘監督、野木亜紀子脚本、和山やま原作。中学生で合唱部部長の岡聡実(齋藤潤)は、コンクールの帰りにヤクザの成田狂児(綾野剛)からカラオケに誘われる。組長(北村一輝)が主催するカラオケ大会で最下位にならないために、成田はX JAPAN「紅」の歌唱指導をお願いするが…。原作コミックは未読。合唱部の中学生とヤクザとカラオケ、この組み合わせをすんなり納得させ、最後は上手くまとめるドラマの映画になっているのは素晴らしい。山下敦弘監督らしい、軽快な展開が上手い。こんなヤクザいないと思うけど、今回の綾野剛は悪くないかな。もも先生(芳根京子)、唐田(やべきょうすけ)とかキャラはいいんだけど、活躍少なめ。「エール!」「コーラス「歓喜の歌」 「うた魂♪」とコーラスものは東西いろいろと面白いのだけど、コーラス自体はあんまり描かれてなかった所は残念。声変わりっていうポイントもいい。

https://movies.kadokawa.co.jp/karaokeiko/