アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督。石油採掘会社のCEOディガー・ロックウェル(トム・クルーズ)は、石油採掘現場の爆発から氷河に亀裂が入ったという緊急報告を受ける。ディガーは、スタッフのガネシュ(リズ・アーメッド)、さらにコンプソン大統領(ジョン・グッドマン)と対策を協議するが、大惨事は広がっていく…。イニャリトゥ監督なんで期待はあったが、どうも米国での興行収入は悲惨だという話ばかりが伝わってくる。個人的には結構好き。地球温暖化や政治や石油業界を徹底的にブラックに批判しているのだが、これを楽しめるかどうかかなあ。米国批判中心すぎかもしれないが。個人的には悪くないと思ったし、物語の構造もなにしろ巧みだと感じた。トム・クルーズの怪演はまあまあ。個人的には、最初が「卒業白書」だから、元に戻った感じ。「Fossil Fools」(化石の愚者?)というタイトル、'COMPLIANCE IS FREEDOM'の落書きはちょっと面白い。
「バイオハザード」-Resident Evil-
ザック・クレッガー監督。医療品の配達人として働くブライアン(オースティン・エイブラムス)は、病院で追加の仕事としてラクーンシティ総合病院への配達の医療バッグを渡される。雪の中、ブライアンは車を走らせるが、飛び出した女性に衝突する…。前作「WEAPONS ウェポンズ」-Weaponsの面白さから、この監督には期待が大だったけど、それをはるかに上回る満足だった。主人公がひたすら病院へ進むだけだけど、その非力で冴えない感じがよくて、だんだんと感情移入して応援したくなる。スプラッタやグロテスクな部分は多いが、なにしろコメディな要素が多いので気にならない。ギャグのように思える。緊張と緩和のテンポも巧み。リブートでかなり違う感じの話になっているので、オリジナルのファンがどう感じるかは不明。「塊魂」や「寄生獣」ぽさにはニヤリとしてしまう。
「本当にあった話(の話)」
武井佑吏監督、鴻池留衣原作。1999年の'配偶者入れ替え連続殺人事件'から数十年、事件を題材にした舞台劇が制作されることになったが、素人で会社員の夛田(水上恒司)は主演のオーディションに受かってしまう。夛田は、相手役の米良(黒木華)、演出家の加藤(佐々木蔵之介)、脚本家の垣内(小池栄子)との稽古の中で苦労するが、やがて役にのめり込んでいく…。 実際の連続殺人事件の舞台化という設定、その稽古の中というのがドラマとしてなかなか面白い。女優、脚本家、演出家ともに、癖がありすぎ。その渦に巻き込まれるように、主役がのめり込んでいくところが、実際にありそうで怖い。ラストはもうちょっと派手に展開するかと期待していたけど。「ブラック・スワン」- Black Swanほどの狂気に走っても良かったと思う。監督の商業デビュー作としてはかなり立派な出来だろう。
「八つ墓村」
清水崇監督、横溝正史原作。大学生の井川辰弥(奥智哉)は母の訃報で、岡山県の山奥八つ墓村を訪ねる。辰弥は探偵の金田一耕助(尾上松也)とバスで偶然に出会い、田治見家を訪れる。そこで森美也子(堀田真由)、双子の大叔母(高島礼子)と会うが、田治見家の相続人となる辰弥を巡り不穏な事件が起こる…。賛否両論というか、否の方が多めな気がするので、ホントは観るのやめようと思っていた。が、これはミステリーじゃなてくホラーだという意見が多いよう。いや、しかし、原作もホラーっぽさが強い。原作をざっと読み返し、1977年野村芳太郎監督版を見返し、ホラーで作るのは妥当だよなぁと確信し、やっと観てきた。結論的には、映画としてはイマイチだが、ホラーとして再構成するのは間違っていない、と思った。ただ、手法、的にも完成度としても低い気がする。謎を残していく野村版の方が、素直なホラーな印象。今回の金田一は無駄に出過ぎ、もっと裏にいて良かったのに。落武者の謎を隠して、物語をひっぱるのは良いと思ったが、そもそも莫大な財産が何かを語らないのは違和感がある。山林なんて、もう莫大な財産じゃないし。
「ディスクロージャー・デイ」-Disclosure Day-
スティーブン・スピルバーグ監督原案、デヴィッド・コープ脚本。サイバーセキュリティ専門家ダニエル(ジョシュ・オコナー)は、米国の秘密組織ワーデックスから機密情報を盗み出し、恋人ジェーン(イブ・ヒューソン)と逃走する。カンザスシティ、ローカル局の気象予報士マーガレット(エミリー・ブラント)は、ある時から身の回りに異変が起きる。一方、ワーデックスのスキャンロン(コリン・ファース)は謎のテクノロジーでダニエルを追うが…。エンタメとしてはまあまあだけど、スピルバーグがマジに陰謀論信じていそうなトコが怖い。それも1980年代の陰謀論という印象。構造が「未知との遭遇」そっくりなのはイマイチ。なにより、世界情勢不安定のニュースをなん度も入れておきながら結末がリンクしてないのがなんでだろう。米国中心すぎなのも、不満点か。なんで宇宙人はみんな米国に着陸するんだ。結局はどう結末つけるか悩んだ末に、うやむやって感じがする。エンタメとしてはさすがと思わせる部分が多い。車を盗む移動の長回しとか緊張感があっていい。相手から見ないテクノロジーは、アクションにコメディ感が上手く融合していてさすがと思った。
「ハート・オブ・ビースト」-Heart of the Beast-
デビッド・エアー監督。退役軍人のジェームズ・ベルモント(ブラッド・ピット)は、元軍用偵察犬で義足のオーディンとともに水上機でアラスカを旅していたが、アクシンデントで奥地に不時着。ジェームズはオーディンとともに、生還を目指すが…。生還を目指してひたすら歩く歩く、という単純な話であるが、様々な困難が容赦なくふりかかり、スピード感がある展開をする。アラスカの大自然は美しく、バディものとして面白いし、なにより犬が賢い。アラスカでのサバイバル術も勉強になる(熊対処とか)。まあ、ふりかかる困難は予想できるが。PTSDには同情するが、犬を軍用にすること自体が気になる。そこには反省はないなあ。
「モネと時間旅行」-La Venue de l'avenir-
セドリック・クラピッシュ監督。ノルマンディーの古い屋敷の売却を巡り、相続権を持つ30人以上から、映像クリエータのセブ(アブラム・バプレ)、鉄道エンジニアのセリーヌ(ジュリア・ピアトン)、養蜂家ギイ(バンサン・マケーニュ)、定年前の中学生教師アブデル(ジネディーヌ・スアレム)が代表して調査を始め、印象派の絵画、祖先アデル(スザンヌ・ランドン)の手紙や写真を見つける。また19世紀ベル・エポックの時代、アデルは母を探しにパリへ向かい、画家を目指すアナトール(ポール・キルシェ)、写真家を目指すルシアン(バシリ・シュナイダー)と出会うが…。古い屋敷の相続をめぐる現代と、19世紀末ベル・エポックの時代を交差させ、その繋がりを見せて謎が解けていくドラマの展開はとても上手い。想像以上にドラマチックで感動的。オランジェリー、オルセー、モネの庭とふんだんにアートな舞台を使っているのもアート心をくすぐって素敵。時々に、実際の絵画のモチーフが出てくる気がする。さっきの人、マネの「フォリー・ベルジェールのバー」の人じゃないか、と思わせたり。二回目観たら、わかるかも。古典絵画、印象派、写真から映画までの芸術の流れもいいな。ちょっとした芸術の歴史散歩をしている気分。