電子竹林:Blog

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「天使に見捨てられた夜」☆

桐野夏生 講談社文庫。「OUT」「顔に降りかかる雨」の桐野夏生。刊行は1994年だから、それほど新しくは無い。「顔に降りかかる雨」の続編にあたる、村野ミロのシリーズの二作目。しかし、桐野夏生の小説は面白い。凄い力だと思う。ポルノビデオの出演者の捜索依頼から進む話の展開は意外な方向へと進む。ハードボイルドの常套手段を使いながらも、まるで陳腐さがない。それと言うのも、それぞれのキャラクタの魅力だろう。解説にも書かれているが、桐野夏生は性愛の作家でもある。村野ミロ自身の浮気から夫の自殺を招く。その罪悪感を常に引きずる。今回はゲイの隣人友部との関係、また調査対象でありながら引かれていく矢代が面白い。この辺は、「OUT」のラストに通じるものを感じる。