電子竹林:Blog

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「深い河」

遠藤周作 講談社文庫。熊井啓監督で映画化されている。観た覚えはあるんだけど内容はほとんど覚えてない。主演は秋吉久美子奥田瑛二。原作は1993年刊行、1994年には毎日芸術賞を受賞。遠藤周作なんて読むのはまったく久しぶり。インドのものというよりは、クリスチャンの遠藤周作らしい宗教的哲学的な要素が強い小説。読めばいかにも遠藤周作らしい読みやすいエンターテイメント。小説としては、構成が非常にちゃんとしている、ちゃんとしているから逆に古臭さを感じるけど、非常に面白い。読ませる力が十分にある。妻の生まれ変わりを探し求める磯辺、ビルマのジャングルで苦しい戦争体験を持つ木口、神学生大津を誘惑した過去を持つ美津子、インドへ旅するそれぞれは自分たちの人生の荷物を背負っている。インドへ旅する事によって、なんらかの答えを求めている。遠藤周作の実体験と、宗教観が微妙に入り混ざっている。スタイルは古臭くはあるけれど、面白い小説だと思う。