電子竹林:Blog

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「内なる殺人者」- The Killer Inside Me -

ジム・トンプソン 河出文庫。ジム・トンプソンを読むのは初めて。映画「ゲッタウェイ」の原作は有名であるけど、翻訳されているのはほとんど無い。「安物雑貨店(ダイムストア)のドストエフスキー」と称される、とか紹介されている。でも、この意味は確かに本書を読むと理解出来る。文章も展開もかなり粗削りな部分があるけど、本質的な部分で面白い。主人公は丸腰の物静かな保安官のルー・フォード。ウェスト・テキサスの田舎町が舞台。町を牛耳る建設業者コンウェイを義兄の仇と復讐の機会を狙っている…。主人公をストーリ的に外から見れば単なる異常者ではあるけど、その精神の内面に深く入って描いているのが面白い。表面的には物静かで、心の奥底では病的な暴力性を持ち、おまけに暇つぶしにラテン語微分積分をするというかなりヘンな奴。