電子竹林:Blog

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「春との旅」

小林政広監督脚本原作。北海道、かつてはニシン漁でにぎわった増毛の海辺の町。老漁師で今は体も不自由な忠男(仲代達矢)は、養ってもらおうと疎遠になっている兄弟を訪ねに出る。父とも離別し母も5年前に亡くなっている孫娘の春(徳永えり)は、その後を追うが…。「リア王」のようでもあり、「楢山節考」のようでもある。現代日本では身につまされるような話であるが、単なる悲劇に終らせずに上手く人間ドラマにしている。最初は「リア王」の道化師的な役だと思った春だが、物語が進むにつれて忠男の人生より春の人生について考えさせる。その構成が見事。演出的には稚拙な所はあるが、黒沢明のように望遠で追う映像も効果的で上手い。大滝秀治菅井きん淡島千景たちも出番は少ないながら印象的。仲代達矢と共演する徳永えりは、前半こそ印象が薄いが、段々と存在感を増して最後には同格に感じさせる立派な演技。ラストも余韻を残して上手い終り方。

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