森達也監督。1923年、元教師の澤田智一(井浦新)と妻・静子(田中麗奈)は日本統治下の京城(ソウル)から、故郷の千葉県福田村に帰ってくる。智一は京城での日本軍の虐殺事件の目撃者だった。9月1日、関東地方を大地震が襲い流言飛語が飛び交う。9月6日、香川の沼部新助(永山瑛太)たち薬売りは福田村の渡し守・倉蔵(東出昌大)と口論になるが…。オウム真理教のドキュメンタリー「A」などを撮った森達也がこの題材をどう扱うのか興味津々。「世界を信じるためのメソッド～ぼくらの時代のメディア・リテラシー」などを書いている立場としては、そのメディア・リテラシーをどう発揮するか楽しみ。結果的にはほぼ満足、やや肩に力が入っているし、詰め込みすぎという感じもするが。特に無駄なお色気シーンは不要。かなりの時間をかけて社会情勢や、それぞれの人物の背景を描き、最後に一気に事件を展開させる。この構成が出来たのは映画として良かった。今の日本でいろいろ考えさせる映画。穢多、癩、部落、鮮人と言葉としても無き物とされてきた事実に目を向けている。これはみんなに見てほしい、正真正銘の社会派。流言飛語と警察の関係はもっと知りたいし、水平社あたりは別の映画にしてもいいぐらいか。
