電子竹林:Blog

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「日本語はいかにつくられたか?」☆

小池清治 ちくま学芸文庫。ちらりと読んだ内容からはムズカシそうな雰囲気がしたのだけど、読んでみるとこれが理解しやすく、何しろ面白い。日本語の成立についてこれだけ判りやすく書いている本は初めて。後書きを読んでみると、なるほど、「仮想読者は高校生、女子高校で講演するようなつもりで、啓蒙的に、かつ、専門の枠から出て広場の言葉で書いて欲しい」と頼まれたとの事。しかし、こういう本はもっと読まれるべきだと思うし、類書がもっと出てきて欲しい。各章、ポイントとなる人間を軸にして展開する。日本語表記の創造(古事記太安万侶)→和文の創造(古今和歌集紀貫之)→日本語の仮名遣の創始(明月記・藤原定家)→日本語の音韻の発見(本居宣長)→近代文体の創造(夏目漱石)→日本語の文法の創造(時枝誠記)、という風。(表意文字とは)、初めから言語の音声的側面を犠牲にし、切り捨てることによって成立したものである「古事記」、「日本書紀」の編纂の事情から推測すれば、「儒教の伝来」を伝える事が主たる目的であり、「中国語の伝来」はその結果の一つとして見るのが穏当な解釈であろう。万葉仮名は仏典の陀羅尼の影響を受けたもの。平仮名、片仮名は日本人の独創であり、それは事務処理の合理化から生まれた。…なるほどと思う所が多い。一番面白いと思ったのは、「平岡のambitionヲinstigateシヤウトシテ失敗。広瀬中佐ノ例」という漱石の「それから」のメモ。漱石の第一の仕事は、この様な内的言語から国民語のスタイルに変換する事であったらしい。面白かった。