電子竹林:Blog

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「生と死の幻想」

鈴木光司 幻冬舎文庫「リング」「らせん」で大ブレイクして、「ループ」もヒットさせる鈴木光司の短編集。と言っても、この本自体は、1995年11月刊行だから結構古い。「紙おむつとレーサーレプリカ」「乱れる呼吸」「キー・ウェスト」「闇の向こう」「抱擁」「無明」の六作。読んでみて改めて思うのは、鈴木光司は父性の作家という事。常に家族を守る父性を表に出している。ストーカを追い詰める「闇の向こう」は、ミステリー的であり、ハードボイルドなタッチ。「紙おむつ…」「無明」も暴力に対する父親像がメイン。「リング」「らせん」などとは異なるタッチではあるけど、鈴木光司の本質はここにあるという事では、特徴的な作品集。小説単体として見ると、傑作とは言えないけど。個人的には「仄暗い水の底から」みたいな、参考にしかならない作品。