電子竹林:Blog

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「イスタンブールのへそのゴマ」 ☆

フジイ・セツコ 旅行人。トルコのエッセイの中では、突出して面白かった。1992年からの5年間のトルコ暮らしの絵日記風エッセイ。生活感に満ちた話題が多くて、リアリティが有って面白い。リアリティは、トホホ度に比例する。不動産屋にだまされる話、歯痛の苦労、電話を引く苦労、最高だったのはアーダ(脱毛)の話。この部分は最高傑作。食べ物の話も面白い。たとえば、"豚肉は食べない"で終わってしまうトルコ料理の本とは違って、豚肉加工品を売っている店の話、知り合いそれぞれに聞いた豚肉に関する意識など追求している。トホホ生活の割には意外にジャーナリズム精神、探求心がある所がこの著者の凄い所。近所の人物が存在感があって描けているし、家の間取りさえも臨場感がある。絵もいい味が出ている。「旅行人」を購読しようと電話した時に、友達に送っていた絵日記のコピーを送る事になったのが出版のきっかけというのも面白い。内容が、いかにも蔵前仁一の「旅行人」から出ている本という感じがしてヨイ(^^)。