電子竹林:Blog

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「フランドルの呪絵」- La tabla de Flandes - Arturo Perez-Reverte

アルトゥーロ・ペレス・レベルテ 佐宗鈴夫訳 集英社原書はスペイン語だが、これはフランス語訳。著者はテロ、密輸、国際紛争などが専門のTVジャーナリスト。本書が3作目で世界的なベストセラーになったとか。修復家のフリアは、画廊の女性経営者メンチェ・ローチから、フランドル派の巨匠ファン・ハイスの修復を頼まれる、X線撮影により、謎めいた言葉「QUISNECAVIT EQUITEM?」(誰が騎士を殺したのか」が絵の下から見つかる。5世紀前の事件を追うフリアの周りで実際に殺人事件が起きていく…。複雑に多層化した物語の構造が、ウンベルト・エーコを思い起こさせる。絵に隠された秘密、チェス盤のコマの謎、殺人、多重構造に入り組んだ物語。美術、歴史、チェス、音楽などの博覧強記の世界は、エーコの「薔薇の名前」への挑戦にも思える。バッハの音楽の話が多く出てくるが、「ゲーテル、エッシャー、バッハ」のホフスタッターの言葉も出てきたり、この多層構造はかなり意識的なものらしい。そういう構造は面白いのだけど、全体としてはミステリーとしてはイマイチだし、文章に乗れない部分は多い。