電子竹林:Blog

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「死の病原体プリオン」☆- Deadly Feasts - Richard Rhodes -

リチャード・ローズ 桃井健司/網屋慎哉訳 草思社前から読みたかったけど、ちょうど狂牛病をきっかけに読み始める。ニューギニアの人食い族の中に広がるクールー、硬膜移植で広がるクロイツフェルト=ヤコブ病(CJD)、羊に広がるスクレイピー狂牛病/牛スポンジ状脳症(BSE)、感染性ミンク脳症(TME)などの実例から、プリオンの実体へ迫る。淡々としたドキュメンタリー風だけど、その内容は致死率100%、長い潜伏期間、スポンジ化する脳と非常に恐ろしい。後半の主人公スタンリー・プルシナープリオン(タンパク性感染粒子)の発見によりノーベル生理医学賞を受賞したが、その感染経路に不明な部分も多い。治療方法も無く、プリオンタンパク質は360度の高温にも生き延びる…。プリオンも恐ろしいが、それを広げている人間も恐ろしい。牛の廃棄部分を再び餌にする肉骨粉など、人工的な共食いがプリオン拡大の根底にある。狂牛病に関して今の日本の状況は、10年ぐらい前の英国にそっくり。何の経験も活かされていないとは驚き…。政府も精肉業者も信用出来ない。「トキシン-毒素」と合わせて読むと、今の食品業界はどうなっているのかと考えさせられる。