電子竹林:Blog

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「フリッカー、あるいは映画の魔」 ☆- Flicker - Theodore Roszak

セオドア・ローザック、中靖訳、文藝春秋。とてつもなく面白かった…。この数年で読んだ小説の中ではベスト。去年の「このミス」のNo.1だったので楽しみにはしていたが、これほど面白いとは思ってもいなかった。自分にとってはこれほど面白い小説は一生のうち、何度も会えないだろう。しかし、人に勧めるとなると躊躇してしまう。特に映画の部分はあまりにマニアック過ぎてイヤになる人が多いかも。「薔薇の名前」を連想する人が多い。ウンベルト・エーコも確かに面白いけど、「フリッカー」の博覧強記、トリヴィアで構築された「虚実皮膜の間」の世界にはクラクラくる。エジソンリュミエールからグリフィス、さらにオーソン・ウェルズは出てくるし(端役だけど)、エド・ウッドの映画まで出てくる。さらに、実は紀元前まで遡る宗教史まで絡んでくる。特に中世の異教オカルトの絡み方は「薔薇の名前」を意識しているのかもしれない。面白く、そして恐かった。読む前の自分とは違う人間になってしまったような感覚を抱かせる、そんな小説だった。