電子竹林:Blog

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「ハンニバル」上

トマス・ハリス 高見浩訳 新潮文庫。- Hannibal - Thomas Harris舞台は「羊たちの沈黙」より7年後、ハンニバル・レクターに復讐の罠をかけようと狙う富豪マイスン・ヴァージャー、その魔手はフィレンツェのレクターまで伸びてくる、その対決に巻き込まれていくクラリス。世間では賛否両論という噂だったけど…それは理解出来る。前評判があまりよくなかったから、思ったよりは面白かったので安心。スティーブン・キングは「レッド・ドラゴン」「羊たちの沈黙」を凌駕していると書いていたそうだけど、まあ、単純に判りやすいので前作の方が好き。そもそもトマス・ハリスが描く世界に、読者はついて行けないんじゃないだろうか。主役はスターリングでは無く、あくまでもハンニバルハンニバルの世界を描きたかったのだろうけど、読者はそこまで行けなかった。善悪を超越した存在と価値観までの壁は高すぎる。それでもハンニバルの美意識の描き方がいい。特にフィレンツェの重厚感ある描き方は素晴らしい。中世の時代を感じさせる街並み、石の冷たさや湿り気までも感じさせる様な臨場感ある文章に引き込まれた。飛行機の機内食のシーンなど、ちょっとした遊びも面白かった。(実際、このシーンは飛行機の中で読んでいたので(^^;))