電子竹林:Blog

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「エサウ 封印された神の子」- ESAU - Philip Kerr。

フリップ・カー 東江一紀+後藤由季子 徳間書店。フリップ・カーと言えば、ナチス統治下のベルリンを舞台にした「偽りの街」「砕かれた夜」「ベルリン・レクイエム」の三部作に感動したものだけど、今回のは余りに違うので驚いた。まず硬派から一転、映画的なスペクタクルというのが驚く。「ネアンデルタール」を思いださせるけど、物語としてはこちらの方が上手い。ヒマヤラの秘峰マチャプチャレで雪崩に巻込まれたジャック・ファーニスが発見した原人の頭蓋骨。旧約聖書の人物からエサウと名づけられる。世界的登山家ジャック・ファーニス、古人類学者ステラ・スウィフトたちは、人類の起源の謎のカギとなる幻の雪男イェティを求めて、再びヒマラヤに向かう。インド・パキスタンの紛争激化、核戦争勃発の緊張感、謎の工作員など背景も面白い。マイケル・クライトンみたいな展開で読ませるのだけど、やはりフィリップ・カーには、もっと硬派な話を書いて欲しかった。