電子竹林:Blog

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「ヒトラーの脳との対話 パラノイアに憑かれた人々 上」

Interview with Hitler's Brain/Whispers:The Voice of Paranoia- Ronald K.Siegel ロナルド・シーゲル小林等訳草思社ケイブマン」を読んだせいでパラノイアものを読んでみる。パラノイアとは妄想系の精神障害で、妄想症、偏執病とも訳される。著者はカリフォルニア大学ロサンゼルス校精神医学行動科学科准教授であり、麻薬関係の鑑定証人を努める。タイトル通り、著者が関わったパラノイアについてまとめた11のケースをまとめた話であるが、パラノイアとともに、著者本人もかなり危ないヤツ。検証のために、自分で麻薬をやって実証する。ロナルド・シーゲルの視点は好奇心の目ではないが、「火星の人類学者」、「妻を帽子とまちがえた男」のオリバー・サックスの様な、患者を見守る暖かい目は無い。著者自身がパラノイア・マニアな印象を受ける。原因が薬物、脳の障害であってもパラノイアとして捉え、本書では著者の専門もあって、麻薬がらみのパラノイアが多い。コンピュータでヒトラーの脳を蘇らせた大学院生のヒトラーの脳との対話、個人監視用人工衛星に監視されていると思いこんでいる科学者、歯がささやくと訴える老女、相手も自分を思っていると妄想を抱くバレリーナ、の5例が上巻。猜疑心、敵対心、投影、妄想がパラノイアの特徴と言えるらしい。