電子竹林:Blog

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「ベストセラー小説の書き方」☆

ディーン・R・クーンツ 朝日文庫。文句無く面白い。ありきたりの文章技法の本では無い。まずはマーケティングから入る所が斬新。SFや推理小説やホラーもの、つまりジャンル小説では無く、とにかく一般大衆小説をめざせと繰り返している。クーンツ自身がホラー専門と思っているから不思議な感じするが、本文を読むと意味が判ってくる。クーンツのホラー作品自体、ジャンル小説では無く、一般大衆を対象に書かれているし、売られているという事であろう。この辺は、米国との事情の違いが微妙にあるだろうから理解が難しいが。マーケティングの事を読むと、それは読者に媚びる事を教えている様に思えるが、実際には作家が陥りがちな罠を避け、自分にレッテルを貼る危険性を教えているのである。その後のストーリの組み上げ方、キャラクタの作り方、背景描写、文体すべて、一般手大衆に読まれるという基本をベースにしている。だから、技術論としてもより細かく実践的。しかし、この本を読むと作家という商売は割に合わないと誰しも思うだろう(^^;)。巻末の読書ガイド「読んで読んで読みまくれ」のリストだけでもこの本は価値が十分にある。ちょっと古いので90年代末ならこれに何人もの作家が加わるだろうけど。中に挙がっている書名で、翻訳されている書名で正しくないものがある。例えば、ハインラインの「獣の数字」など「ザ・ナンバー・オブ・ザ・ビースト」となっているし(P272)。原書は1981年、日本での単行本化は1983年の刊行。