電子竹林:Blog

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「柔らかな頬」☆

桐野夏生講談社。「OUT」から二年たった、書き下ろし。謎の別荘地幼児失踪事件。「私は子供を捨ててもいいと思ったことがある」という主人公カスミ。事件を追うのが余命半年の癌宣告を受けた元刑事(34歳)の内海。人間の視点を変えて、それぞれの心理を描写していく、それによって事実が明らかになっていく手法は面白い。「OUT」みたいなパワーが無い分、繊細な文章や構成には引かれる部分は多い。でも「OUT」の方が好き。特に「OUT」の練りに練られたラストは最高だと思う。この「柔らかな頬」のラストは随分と逃げているような気がして欲求不満になってしまう。構成は、ちょっと高村薫を意識しているような気がした。