電子竹林:Blog

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「溺れゆく者たち」- The Drowning People- Richard Mason

リチャード・メイソン 那波かおり訳 角川文庫主人公はヴァイオリニスト志望の青年ジェームズ・ファレル、そしてのちに妻となるサラ、その従姉のエラ、エラの婚約者チャールズ、ジェームズの親友エリック、噂好きの友達カミラなど。話はジェームズの50年前の回想で展開する。「45年間連れそった妻のサラが拳銃でみずからを打ち抜いて死んだ」という書き出し、そして数行後では「妻を殺したのはわたしである」と告白。この出だしの一文は21歳の俊英と言われるぐらいには見事ではあるけど、後はストーリ的にはイマイチ。文章は軽快で読みやすく、それなりには面白いのだけど、肝心のミステリ部分はあまりにお粗末。前半で想像出来たストーリ展開の一番面白くないモノに一致してしまうぐらい。ミステリ仕立てでありながら練りが足りず、文章には人生経験の浅さが出てしまっている。