電子竹林:Blog

はてなダイアリーより引っ越し済み、主に映画

「君は永遠にそいつらより若い」

吉野竜平監督脚本、津村記久子原作。大学4年の堀貝佐世(佐久間由衣)は、地元での児童福祉への就職が決まり、卒論のアンケートをだらだらと続けたりバイトしたりの毎日。ある時、飲み会で、友人・吉崎(小日向星一)が連れてきた穂峰(笠松将)と知り合い、また哲学科の猪乃木楠子(奈緒)にノートを借りることになるが…。原作は未読だけど、太宰治賞。太宰治というとなるほどと思うイマドキな時代感覚と焦燥感、葛藤感がある。いろいろな部分でカリカリと心にひっかかる所があって苦しい。ネグレクトとか児童虐待とか暴力とかの社会性もいい。恋愛しときゃ青春映画だと思っている人はこれ観て反省して欲しいよ、まったく。主演の佐久間由衣もいいけど、最近すっごい映画に出ているけど地味だと思ってた奈緒がイイ、脇役キャラだと思ってたが今回は主人公を喰うほどイイ。

http://www.kimiwaka.com/

「マスカレード・ナイト」

鈴木雅之監督、東野圭吾原作。都内でタイマーでの感電死殺人事件が発生。また感電死の犯人が、大みそかにホテル・コルテシア東京で開催されるカウントダウンパーティ「マスカレード・ナイト」に現れるという匿名ファックスが届く。警視庁捜査一課の新田(木村拓哉)たちは山岸(長澤まさみ)の働くホテルで潜入捜査を開始。客は二人宿泊の仲根緑(麻生久美子)、不倫利用の貝塚由里(高岡早紀)、家族三人の曽野万智子(木村佳乃)、注文の多い日下部篤哉(沢村一樹)たちであったが…。「マスカレード・ホテル」の続編、原作ではシリーズ第三作、原作未読。第二作は前日憚となる短編だからパスしたんだろうな。映画としては、前作の方がホテルの細部の描写が面白いし、事件もまだすっきりしていて面白かった気がする。事件は動機がかなり納得感が薄いし、ミスディレクションもしつこい感じ。特に沢村一樹はイラっとくる。仮面舞踏会という設定も、それほど活きている感じはないなあ。木村拓哉は相変わらずでまあよい。東野圭吾は感電死をよく使うけど(知ってるだけで三作あるから、もっとあると思う)、そんなに簡単ではないと思うのだがなあ。

https://masquerade-night.jp/

「レミニセンス」-Reminiscence-

リサ・ジョイ監督。海面が上昇した近未来のマイアミ。ニック(ヒュー・ジャックマン)とワッツ(タンディ・ニュートン)は記憶に潜入し、映像を再現するレミニセンスの仕事をしていたが、ある時に検察から、瀕死のギャングへの潜入を依頼される。ニックは謎の女メイ(レベッカ・ファーガソン)と出会うが、メイはギャングのジョー(ダニエル・ウー)、悪徳警官ブース(クリフ・カーティス)とつながっていく…。SF的な設定だが、そこは薄め。記憶潜入もけっこう適当。全体の作りはハードボイルドでロマンティックで面白さはそこにある。個人的には「チャイナタウン」を連想させた。水不足のLAに対して水没するマイアミ、象徴的な使い方の水、貧富の差の描き出し方、色使いやトーンも意識している感じがするが、どうだろうか。全体に古臭い感じはするが、嫌いじゃない。クリストファー・ノーランの弟、ジョナサン・ノーランが製作って変な宣伝の仕方をしているから、「インセプション」「インターステラー」なイメージを持って観る人が多そうだけど、それだと失望する気がする。ラストの見せ場のシーンはかなりいい、全体を象徴するシーン。

https://wwws.warnerbros.co.jp/reminiscence-movie/

「先生、私の隣に座っていただけませんか?」

堀江貴大監督脚本。人気漫画家の佐和子(黒木華)は夫の俊夫(柄本佑)も漫画家だが、最近は作品が描けていない。佐和子は連載終了で、担当の桜田千佳(奈緒)に最後の原稿を渡した直後、母(風吹ジュン)が事故で怪我したのを知る。佐和子は俊夫と実家で住む事になり、教習所に通う事になり教官・新谷(金子大地)と出会う。そして佐和子は、新作のネームを始めるが、それは不倫の物語だった…。「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2018」の準グランプリ映画化。ちょっとサイコサスペンスな味もあって、現実と虚構が曖昧になっていく。一体どっちなの、って謎を最後まで引っ張っていくのは上手い。メリハリは弱いし登場人物も少ないが、ラストへの展開は緊張感もあって面白い。

https://www.phantom-film.com/watatona/

「スパイラル ソウ オールリセット」-Spiral: From the Book of Saw-

ダーレン・リン・バウズマン監督。ジーク(クリス・ロック)は前署長のマーカス・バンクス(サミュエル・L・ジャクソン)の息子で優秀だが、署内では目の敵にされていた。警官相手のジグソウの模倣犯と思われる猟奇的殺人が起き、所長のアンジー・ガーサ(マリソル・ニコルズ)は、新人ウィリアム・シェンク(マックス・ミンゲラ)をマーカスの相棒にするが…。「ソウ」シリーズもかなりつまらなくなってどーでもいいんだけど、リセットというので一応観たがやっぱりつまらん。Rotten Tomatoで30点台だったのも納得。同じことの繰り返しか。まあシリーズも面白いのは最初の「ソウ」だけだった。監督は「ソウ2」から「ソウ5」のダーレン・リン・バウズマンだから、詰まらなくした張本人なのか。いや、「ソウ2」もバウズマンの脚本を無理に続編にしたのだから、リー・ワーネルのせいかもしれないけど。

https://spiral.asmik-ace.co.jp/

「浜の朝日の嘘つきどもと」

タナダユキ監督脚本。福島県南相馬、閉館直前の映画館・朝日座にふらりと現れた浜野あさひ(高畑充希)。あさひは支配人・森田保造(柳家喬太郎)に茂木莉子と名前を偽り、朝日座を立て直すために来たと言う。それは、実はあさひと恩師、田中茉莉子(大久保佳代子)との約束のためだった…。テレビドラマ版の前日譚だがドラマは未見。福島中央テレビ開局50周年記念作品、ということで公開もややマイナーか。映画愛と福島の人々の色々な思い上手く出ている。タナダユキっぽさは薄めな気がするが、映画としては好き。ベトナム人のバオ君役佐野弘樹はいいアクセントになっていた。大久保佳代子は脇役な印象の人だったが、メインでもいいなあと思った。一番笑えたのは森田保造57歳のところだが、柳家喬太郎はホントに57歳なのか。グリフィス、リリアン・ギッシュの「東への道」の氷河シーンがちょっとだけだけど大画面で見られたのは幸福(このシーンのリリアンはまるでバスター・キートン)。

https://hamano-asahi.jp/

「沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家」-Resistance-

ジョナタン・ヤクボウィッツ監督。1938年ナチスの勢力が増して行く中、肉屋の息子マルセル(ジェシー・アイゼンバーグ)は、父の反対を無視して舞台に立っていたが。マルセルは、エマ(クレマンス・ポエジー)、その妹ミラ(ビカ・ケレケシュ)と共にエルスベート(ベラ・ラムジー)たちユダヤ人孤児の世話をしていた。1942年ドイツ軍がフランスを占領、ナチスの親衛隊クラウス・バルビー(マティアス・シュバイクホファー)たちの手がマルセルたちに伸び、子供たちを逃すことを考えるが…。マルセル・マルソーはそれなりに知っているが、彼のそんな面を知らなかったので結構面白かった。緊張感も感じさせるし、当時のリアル感もある。だが、そもそもどこでマルセル・マルソーを知ったのかという記憶も曖昧だな。リヨンの虐殺者クラウス・バルビーは、ボリビアに逃げ、フランスに引き渡されたのが1983年、獄死したのが1991年というのも驚き。

http://resistance-movie.jp/