電子竹林:Blog

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「ビッグ・ピクチャー」☆- The Big Picture - Douglas Kennedy

新潮社文庫、ダグラス・ケネディ、中川聖訳。ウォール街の法律事務所のジュニア・パートナー弁護士ベンが主人公。年収30万ドルを越えるヤッピー、妻と二人の息子を持つはた目には幸福な生活。しかし、妻の浮気に気が付いたベンが激情から犯罪に及ぶ。そして次々と工作を行い…。確かに主人公は犯罪者ではあるけど、読者の多くはどんどん主人公に肩入れしてしまうと思う。所々に見える隠れする息子を思う気持ちを感じる時、犯罪者も一人の人間である事を痛感する。「OUT」や「シンプルプラン」や「夜光虫」など、ちょっとした犯罪からどんどんと人間性を失っていく主人公を描いたものが多かった気がする。そういう意味では、この小説は犯罪小説とは言えない、犯罪者の人間ドラマと言える。処女作「The Dead Heart」は映画化されたらしいけど、日本では未公開。本書「ビック・ピクチャー」もディズニーにより映画化権を取られているので期待している。