電子竹林:Blog

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「おかしな男 渥美清」☆

小林信彦 新潮社。「波」に1997年4月号~1999年12月号に連載されたものを、加筆修正しまとめたもの。1996年8月に没した渥美清との交流、記録。人間としての渥美清が判って面白い。才能ある努力家、インテリをおそれている、無邪気さ、計算高さ、上昇指向、肉体的弱さに対する不安、秘密主義、現実主義、神経質さなどなど、小林信彦の冷静な目が描き出す。戦後の芸人についてのさまざまな話題も面白く読める。藤山寛美の話、「幕末太陽伝」が面白すぎて、後年、川島雄三が姉妹編として企画していた(といってもメモだけが残っていた)「寛政太陽伝」に固執したフランキー堺の不幸、渥美清に対する伴淳三郎のいらがらせ、などなど。病気の体で撮っていた晩年の「男はつらいよ」の苦労、銀幕の中からも痛々しさが伝わってしまっていたので、読むのも辛い。しかし、没後に突然神聖化されて国民栄誉賞をあげるなんか、馬鹿らしい。あげるなら、生きているうちにして欲しいもんだ。この本には出てこないが、渥美清の芸名は、大衆小説の主人公、渥美悦郎から取ったらしい。名字が私と同じなので、ずっと気になっていたのだけど。Nobuhicom - 小林信彦ホームページ