電子竹林:Blog

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「火星の人類学者 脳神経科医と7人の奇妙な患者」☆- An Anthropologist on Mars - Oliver Sacks

オリヴァー・サックス 早川書房映画にもなった「レナードの朝」の著者、脳神経学者。脳の障害による不可思議な症状を持つ7人の患者の話。その不可思議さから人間の脳の神秘的な働きの輪郭を知る事が出来て面白い。患者を見る眼には、好奇心によるのぞき見主義な意識はまるで感じられず、対等な人間同士の交流がある。そこがこの本を格調高く、そして感動的な物語にしている。症状を治せるとしても治そうと思わないと皆が言うのが、興味深い。1) 「色覚異常の画家」:完全に色を失った画家のジョナサン.I。2) 「最後のヒッピー」:脳腫瘍のため視覚と記憶能力を失い、60年代に閉じ込められたグレッグ.F。3) 「トゥレット症候群の外科医」:突然飛び跳ねたりする、あちこちに触るなどするトゥレット症候群。手術中は見事に症状が消えるのが不思議。4) 「見えていても見えない」- 中年になってから手術によって初めて視力を得た男。見えるという異常な世界に戸惑い続け、再び視力を失う事により心の安定を取り戻す。5) 「夢の風景」- 驚異的な記憶力で故郷のイタリアの村ポンティントを描きつづけるフランコ。現実のポンティントを訪れ、混乱してしまうのが悲しい。6) 「神童たち」: ひと目見ただけで風景、建物の細部まで絵に描く自閉症の少年スティーブン。7) 「火星の人類学者」: 自閉症でありながら、コロラド州立大学動物行動学助教授のテンプル・グランディン。人間同士の交流、触れ合い、感情、騙しあいが理解出来ず、自らを「火星の人類学者」の様な気がするという。