電子竹林:Blog

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「ファーザー」-The Father-

ロリアン・ゼレール監督。ロンドンのフラットで一人暮らす81歳のアンソニー(アンソニー・ホプキンス)は、記憶が曖昧になる日々。娘のアン(オリビア・コールマン)は新たな介護人ローラ(イモージェン・プーツ)を手配する。もう一人の娘ルーシーの姿は見えない。そしてアンと結婚して10年という見知らぬ男(マーク・ゲイティス)が現れるが…。アカデミー主演男優賞まで存在を知らなかった映画。認知症の話だけど、終始サスペンスドラマのように怖い感覚。主人公の混乱と恐怖を観客にも体験させる構成が成功している。モリエール賞の最優秀脚本賞の戯曲「Le Pere 父」が元らしく、狭い空間と少人数で展開するが、その空間や人の使い方を逆手にとっていて最後まで上手い。小説家で戯曲家の原作者が監督やっているらしいが、初監督でこれが撮れるのは凄いな。認知症モノは多過ぎな気がするが、「おらおらでひとりいぐも」 「長いお別れ」「サクラサク」 「海辺のリア」みたいなオブラートに包んだ感じではなく、突き放している。厳しさでは「しわ」を連想した。認知症の主観で作ったのが何しろ上手いな。家具や装飾や間取りや小物や、細かい所に目がいかないと色々見逃して怖さが分からないと思う。

https://thefather.jp/