西谷弘監督。犯罪捜査コンサルタントの誉獅子雄(ディーン・フジオカ)と精神科医の若宮潤一(岩田剛典)は、瀬戸内海の離島、蓮壁家の事件を調査する。長女・紅(新木優子)が誘拐され、当主の蓮壁千鶴男(西村まさ彦)は身代金を渡したのちに魔犬の写真を残し変死する。関係者の母の依羅(稲森いずみ)、長男・千里(村上虹郎)、執事・馬場(椎名桔平)、地震学者・捨井(小泉孝太郎)、リフォーム会社の冨楽雷太(渋川清彦)と朗子(広末涼子)と怪しい人物ばかりだったが…、ドラマ未見なんだが、ホームズの中でこの話が好きなもんでつい観てしまった。まあまあだが、全体にチープな感じで、事件解決も適当で、見なくてよかったかもなあ、と後から思った。細かい設定がいろいろと雑で気になる。身代金、金庫、トラバサミ、ドローン、地震とか。人間関係は整理されているが、活かされていない気もする。
「メタモルフォーゼの縁側」
狩山俊輔監督、岡田惠和脚本、鶴谷香央理原作。進路に悩む高校2年の佐山うらら(芦田愛菜)は、本屋でバイト中にBL漫画を買って行く75歳の市野井雪(宮本信子)と知り合う。二人は、BL作家コメダ優(古川琴音)の漫画を通して友達になるが…。原作未読。中盤からそりゃ無理だろって展開でひっぱるが、なかなかに盛り上げて最後も上手くまとめてくれた。この映画はかなり好きだなあ。宮本信子は1997年の「マルタイの女」 から10年ぶりに「眉山」に出たけど、それからメインはほとんどなかった、ひさしぶりな感じ。今回はかなりいいなあ、「タンポポ」に並ぶぐらい好きかも。芦田愛菜はボーっとした感じがいい。キリっとしすぎな汐谷友希といい対比が出ている。団地幼馴染の高橋恭平は出番多い割には存在感薄かった、もうちょっと活躍するのかと思った。
「FLEE フリー」-Flee-
「オフィサー・アンド・スパイ」-J'accuse-
ロマン・ポランスキー監督、ロバート・ハリス原作。1894年、ユダヤ系のフランス陸軍大尉ドレフュス(ルイ・ガレル)はスパイ容疑で終身刑を言い渡される。対敵情報活動を率いることになったピカール中佐(ジャン・デュジャルダン)はドレフュスの無実を示す証拠を発見するが、上層部はそれを隠蔽しようとする…。19世紀末のフランスの有名な冤罪、ドレフュス事件の話。基本は史実そのままで、軍の体面と権力に対抗していく戦いが見どころではあるのだけど、興味がないとまったくつまらないかもしれない。反ユダヤからシオニズムの誕生の背景であり、重厚で社会性もあって個人的にはよかった。ユダヤ迫害で苦労したポランスキーらしい展開かと思わせたが、ドレフュスは結構、頑固だけど嫌なヤツ感があるのが面白い。ベネチアで銀獅子賞。しかしロマン・ポランスキーというと、作品よりも前に、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」でも描かれていた、シャロン・テートを思い出してしまうのが悲しい。
「ALIVEHOON アライブフーン」
下山天監督。レース・ゲームで日本一の大羽紘一(野村周平)は、夏実(吉川愛)からドリフトチームにスカウトされる。そこは、武藤亮介(陣内孝則)の怪我によりドライバーを失った、メカニックの夏実、葛西(本田博太郎)たちの小さなチーム。紘一は柴崎快(福山翔大)、小林総一郎(青柳翔)たちと争っていくことになるが…。下山天監督というのであんまり期待はなかったのだが、予想よりはよかった。小型カメラの発達でいろいろな映像を撮れ、迫力を増していることに助けられている印象。まあ、それでもドリフトレースという競技の面白さの限界な気もする、ルールよくわからんし^^;。ドリフトの美学を追求したいなら、新たなゲームを創造してもよかったんじゃないだろうか、映画なんだし。土屋圭市が監修。
「太陽とボレロ」
水谷豊監督。地方都市のアマチュア交響楽団、弥生交響楽団は経営が厳しく、主宰者である花村理子(檀れい)は解散を決意。解散コンサートを決めるがスポンサーで理子の先輩・鶴間(石丸幹二)、バイオリンのあかり(森マリア)、トランペットの圭介(町田啓太)たちの思惑が交錯する…。水谷豊が監督の三作目。一作目「TAP THE LAST SHOW」がひどくて二作目「轢き逃げ 最高の最悪な日」はマシになったから多少の期待はあったが、まるでダメだなあ。水谷豊のオリジナルらしいが、センスが全体に古過ぎる。音楽部分はいいので、指揮者の西本智実ファンにはいいのかもしれないけど。
「犬王」
湯浅政明監督、野木亜紀子脚本、古川日出男原作「平家物語 犬王の巻」。京の都、近江猿楽の比叡座の家に生まれた子ども、犬王(声:アヴちゃん)は奇怪な姿のために衣服で覆い、面を被せられ育った。一方、壇ノ浦で三種の神器の草薙の剣により盲目となった友魚(声:森山未來)は琵琶法師となり、京で犬王と出会うが…。原作は未読。方向性が掴めない展開だが中盤からはなかなかよかった。音楽的には女王蜂のアヴちゃんに引っ張られている感じ。ロックっぽさは結構いいのだが、そこに頼りすぎな展開なのは気になる。肝心な物語としての中途半端に感じる。その分、脇役の味も薄い。最後は原作通りだからしかたないのか、もっとカタルシス感が欲しかったなあ、あの展開なら。「どろろ」っぽさが設定にあるんだが、その辺も活きてこない。ダンスとかのロトスコープ作画もイマイチかなあ。とはいえ、全体にはまあよかった。