電子竹林:Blog

はてなダイアリーより引っ越し済み、主に映画

「正欲

岸善幸監督、朝井リョウ原作。桐生夏月(新垣結衣)は実家暮らし、契約社員としてショッピングモールで働く変わり映えのしない日々だったが、中学の時に転校していった佐々木(磯村勇斗)が地元に戻ってきたことを知る。横浜の検事・寺井(稲垣吾郎)は、不登校YouTubeを始めた息子に関して妻と衝突していた。また、大学生の神戸八重子(東野絢香)は、ダイバーシティフェスを企画しダンスサークルの大也(佐藤寛太)たちに出演を依頼するが…。いかにも原作の朝井リョウっぽく、バラバラな群像が収束していく展開。大まかには性的指向の話、それによる生きづらさ、社会の多様性みたいなトコが焦点。その辺をうっすらと見せながら、ベールを剥がしていく展開は上手いけど、全体には上っ面感を感じてしまう。それぞれの、ドロドロした心情は見えてこなかったし、生きづらさも雰囲気でしか感じられなかった。この辺は映画表現の限界なのか、原作でもそうなのか気にはなる。多様性と言っても、それぞれ各自にとって思う多様性であるってトコは物語のポイントではあるが、実際はこの表現者側にも当てはまる気はする。2023年東京国際映画祭コンペティション、最優秀監督賞と観客賞らしいが、それほどかなあ。時代的なバイアスがかかっている気がする。自分の好みは、「ラースと、その彼女」みたいな温かい視点なのかも。

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