電子竹林:Blog

はてなダイアリーより引っ越し済み、主に映画

「アルプススタンドのはしの方」

城定秀夫監督。夏の甲子園、母校の1回戦の応援のために演劇部のあすは(小野莉奈)とひかる(西本まりん)はスタンドの隅に座るが、そこに元野球部の藤野(平井亜門)がやってくる。また、同じ隅に宮下恵(中村守里)もいたが、宮下は学年一位の成績を吹奏楽部の久住(黒木ひかり)に取られたばかりだった…。2017年第63回全国高等学校演劇大会で最優秀賞となる文部科学大臣賞した、東播磨高校の戯曲の映画化、元は未見。脚本がめちゃくちゃ上手い。これが高校生が書ける世界なのかと驚かされる(訂正:脚本は先生みたい...)。スタンドの端で展開される高校生の青春一幕、75分と短いけど、そこに凝縮された高校生のモヤモヤとした感覚が見事。何人かの人物は出てこないからこそ印象的で、そこはベケットゴドーを待ちながら」を連想させる(あるいは「大怪獣東京に現わる」か)。

https://alpsnohashi.com/

「海底47m 古代マヤの死の迷宮」-47 Meters Down: Uncaged-

ヨハネス・ロバーツ監督。メキシコ、親同士が再婚した姉ミア(ソフィー・ネリッセ)と妹サーシャ(コリーヌ・フォックス)は、考古学者の父グラントの計らいでサメ見学ツアーに出かける。二人は途中でミアの親友ニコール(システィーン・スタローン)とアレクサ(ブリアンヌ・チュー)に出会った事から、父グラントたちが調査しているマヤ文明遺跡の海底洞窟でダイビングする事になるが、そこには盲目の巨大サメがいた…。「海底47m」の第二弾というけど、関連性はメキシコ、サメ、ダイビングぐらいか。47mは関係ない。前作よりは派手な展開だけど、その分、雑さは出てる。マヤ遺跡とか、なんか深みはまるでなくて設定だけでしかない。良いところ悪いところのプラマイで全体には前作ぐらいの面白さかな。その割には水中撮影はやはり凄い、ほぼ全編水中だし大変そう。コリーヌ・フォックスはジェイミー・フォックスの娘、システィーン・スタローンはシルベスター・スタローンの娘となぜか二世女優が二人登場。

https://gaga.ne.jp/47m_maya/

「17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン」-Der Trafikant-

ニコラウス・ライトナー監督。ナチス・ドイツによるオーストリア併合直前の1937年、地方からウィーンにやってきた17歳のフランツ・フーヘル(ジーモン・モルツェ)は母の知り合いオットー(ヨハネス・クリシュ)のタバコ店で助手として働き始める。フランツはボヘミアのアネシュカ(エマ・ドログノバ)を好きになり、店の常連の心理学者ジークムント・フロイト(ブルーノ・ガンツ)に恋の相談をするが…。地方の少年とフロイトの交流が主軸だが、描いているのはナチスによる併合直前のウィーンの社会の様子、そこはかなり面白い。「サウンド・オブ・ミュージック」は同じ時代で同じ国のザルツルグ。こちらはかなり市民寄りで、違いも興味深い。共産主義者ナチス寄りの肉屋、反ナチスボヘミア人などなど登場人物の配置も面白い。夢のシーンはフロイトの夢判断に出てくるモチーフが出てきて、知ってるとちょっと面白いかも。一部で公開された時は「キオスク」の邦題。原題「Trafikant」はそのままタバコ屋。「ヒトラー~最後の12日間」ではヒトラーを演じ高い評価を得たブルーノ・ガンツユダヤ人のフロイトを演じている。そして彼の遺作、RIP。

http://17wien.jp/

「ブラック アンド ブルー」-Black and Blue-

デオン・テイラー監督。ニューオーリンズ、新人警官で元軍人のアリシア・ウェスト(ナオミ・ハリス)は、相棒ケヴィン(リード・スコット)の代わりに遅番でベテラン警官のディーコンとパトロールに出る事になる。朝方、偶然にディーコンと麻薬課刑事テリー(フランク・グリロ)とスミッティが麻薬売人ゼロを射殺する現場を目撃、ボディカムに録画してしまう。アリシアは必死に逃亡し旧友マイロ(タイリース・ギブソン)に助けを求めるが、テリーたち警察、さらに組織ボスダリウス(マイク・コルター)もアリシアを追う…。ハリケーンの爪痕も残るニューオーリンズ、故郷でありながら味方がまったく無く、警査とギャング両方から追われ一人逃げ惑う構図が上手い。どこかであったような物語だけど、緊張感を非常に高く保ちながら展開していく。その中で真っ当に正義を貫いていく姿がいい。最近の警察の黒人暴行やボティカムなど、ネタもタイムリーな印象。

https://www.black-and-blue.jp/

「コンフィデンスマンJP プリンセス編」

田中亮監督。シンガポールで世界的富豪の当主レイモンド・フウ(北大路欣也)が死去。その3人の子供、クリストファー(古川雄大)、ブリジット(ビビアン・スー)、アンドリュウ(白濱亜嵐)の前で執事トニー・ティン(柴田恭兵)が発表した10兆円の資産の後継者は誰も知らない末っ子ミシェルだった。詐欺師のダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)たちは、偶然に知り合ったコックリ(関水渚)をミシェルに仕立てようとするが…。「コンフィデンスマンJP」に続いて劇場版第二弾、まあ全体にはノリも出来も同じぐらいかな。ゲストを一人加えてチーム作って海外でコン・ゲーム、さらにゆかりの人物が絡んでくるという構図はまるで同じ。無理に日本人俳優で固めるのも同じだな、かなり不自然だけど。ビビアン・スーは懐かしい。ドラマ版が好きなら満足だろうが、コン・ゲーム映画としてはネタやテクニックや完成度の低さでやはりちょっと不満かな。三浦春馬は意外に出番多くてちょい物悲しい。香港の珍寶王國のシーンは無理やりだが唯一、斬新なアイデアと思った。珍寶王國の閉店が決まってから数ヶ月だと思うが、よく脚本書けたな(まさか偶然??)。

https://confidenceman-movie.com/

「今日から俺は!!劇場版」

福田雄一監督、西森博之原作。1980年代の千葉、軟葉高校の金髪の三橋(賀来賢人)、トゲトゲの伊藤(伊藤健太郎)は周辺でも恐れられるヤンキーになっていた。三年になった頃、開久高校の一部を間借りする事になった根壊高の大嶽(栄信)と柳(柳楽優弥)は校内でアコギな商売を始める。開久高校の森川悟(泉澤祐希)がそれに反発した事から、何故かスケバン涼子(山本舞香)が三橋を狙い、さらに伊藤、理子(清野菜名)、京子(橋本環奈)、今井(仲野太賀)まで巻き込んでいく事になるが…。原作は多少読んでるが北根壊編は未読。ドラマ版は未見だが、まあ人物関係は分かる。なんで今ごろヤンキーものと思うが、今の視点だと西部劇や時代劇ぐらい離れた時代の感覚なのかも。福田雄一っぽくかなりコメディ色は強いが、物語はちゃんとしているかな。人物多くて結構複雑だけど。賀来賢人、栄信、柳楽優弥が30歳以上、他20代後半もたくさんいるオッさんぽさも80年代っぽいかな。

https://kyouore-movie.jp/

「一度も撃ってません」

阪本順治監督、丸山昇一脚本。かつての純文学作家・市川進(石橋蓮司)は、今は出版もされないハードボイルド小説を書き、妻・弥生(大楠道代)と二人暮らし。市川は旧友で元検事の石田(岸部一徳)や元女優・ひかる(桃井かおり)たちとバーYで飲み、また伝説の殺し屋・御前零児を気取っていたが…。物語の設定からコメディ色が濃いかと思ったら、意外にまともなハードボイルドの路線。俳優もスタッフも客も、年寄り中心な昭和感覚はかなり強いけど物語はちゃんと成立している。今西(妻夫木聡)の背景や市川との関係性、石田の現在の背景などはもうちょっと深く描いても良かった気がする。ちょっとシリアスに寄りすぎるかもしれないけど。豊川悦司だけはクレジットまで分からなかった。市川が憧れるのがチャンドラー やハメットや、大藪春彦でもなく、北方謙三なのはなんでだろう。

http://eiga-ichidomo.com/