電子竹林:Blog

はてなダイアリーより引っ越し済み、主に映画

「シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!」-Edmond-

アレクシス・ミシャリク監督。1897年パリ、詩人で劇作家エドモン・ロスタン(トマ・ソリベレ)は失敗続きだったが、女優サラ・ベルナール(クレマンティーヌ・セラリエ)のツテ、カフェ店主オノレ(ジャン=ミシェル・マルシアル)のヒントから有名俳優コンスタン・コクラン(オリビエ・グルメ)の舞台を手掛けることになる。執筆が進まないエドモンドだったが、友人レオ(トム・レーブ)に代わって衣装係ジャンヌ(リュシー・ブジュナー)に手紙を出し続けることから創作が進んでいくが…。「シラノ・ド・ベルジュラック」の誕生秘話、だけどほとんどは創作だろう。元になっているシラノも複雑な構成の物語だけど、さらに現実とそれから創作される演劇を重ねる二重の複雑な構造。完全にシラノを知っている前提な展開な気がする。まあ、「ロミオとジュリエット」並にフランスでは常識な話なんだろうな。最後はテンポよく上手くまとめたなあという印象。個人的にはシラノの映画ではドパルデュー版などより、マーティンとハナの「愛しのロクサーヌ」が一番好きかも^^。しかし、なんだこの邦題は..原題は"Edmond"(作者)でシンプルなのに。

https://cyranoniaitai.com/

「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」-Missing Link-

クリス・バトラー監督脚本。未知の生物を追い求めるライオネル・フロスト卿(声:ヒュー・ジャックマン)は、ダンスビー卿たち英国貴族に認められようとしていたが、ある手紙から情報を得て米国大陸でビッグフットのMr.リンク(声:ザック・ガリフィアナキス)と出会う。ライオネルは仲間に会いたいというMr.リンクの願いを叶えるために、伝説のシャングリアを目指し、元恋人のアデリーナ(声:ゾーイ・サルダナ)が持つ地図を狙うが、ダンスビー卿の刺客・ステンクがライオネルたちを追っていた…。「KUBO クボ 二本の弦の秘密」「コララインとボタンの魔女」などのライカのアニメ。まったくこれがストップモーション・アニメとは信じられない映像で驚くばかり。実写では出せない質感を出し、その完成度ばかりが気になる。デフォルメされたそれぞれのキャラの作り方もストップモーションらしい。色彩感覚もいい。物語としては単純すぎ、Mr.リンクの背景などにも深みがないのは残念。ラストの盛り上がりにも欠ける。あっさりし過ぎ。脚本が残念かなあ。

https://gaga.ne.jp/missing-link/

「THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女」-過春天 The Crossing-

バイ・シュエ監督。16歳のペイ(ホアン・ヤオ)は深センで母と暮らし香港の高校に越境通学している。トラック運転手の父は香港で別の家庭を持ち、母は友達との麻雀と酒の日々。ペイは親友ジョー(カルメン・タン)と北海道へ旅行へ行くことを夢見て小遣いを貯めているが、あるパーティで知り合ったハオ(スン・ヤン)の仕事、iPhoneの密輸を手伝うことになる…。旧題は「過ぎた春」、2019年第14回大阪アジアン映画祭で「来るべき才能賞」を受賞。ペイは香港で生まれ深センに暮らす、その背景となる越境通学のシステムの説明がないのは、もう当たり前になっているってことかな。アイデンティティ、現地の経済、人々や子供達のリアルな感じがいい。iPhoneを運ぶだけで大金になるってのが日本からは分かりにくいが。北海道への憧れ感もちょっと面白い。iPhone巻き付けの所は、恋愛の緊張感とエロティシズムが香る名シーンだと思った。

https://www.thecrossing-movie.com/

「ばるぼら」

手塚眞監督、手塚治虫原作。人気小説家・美倉洋介(稲垣吾郎)は新宿で、ホームレスのような少女ばるぼら(二階堂ふみ)と出会い家に連れ帰る。ばるぼらをミューズとしてのめり込んでいく美倉を、編集担当の甲斐加奈子(石橋静河)、作家仲間の四谷(渋川清彦)、恋人の里見志賀子(美波)たちは心配するが…。原作は映画化するにはかなり難しい題材だと思う。70年代な雰囲気だし、これはATGや鈴木清順あたりがムチャな作りで描くなら面白くなりそうだけど、手塚眞が監督というのがなんと言っても心配だった。おおまかに展開は原作通りだけど、面白みはない。原作もエピソードや雰囲気はそれなりだけど、展開自体はそれほど面白くないと思う。原作のコマをそのまま映像にしているようで、創造性が薄い。二階堂ふみ稲垣吾郎も大変な演技の割にこの出来で残念だろう。原作では一番派手な、下水道のシーンとかなかっただけマシだけど。まあ撮影コストがかかるからかなあ。撮影はクリストファー・ドイル

http://barbara-themovie.com/

「水上のフライト」

兼重淳監督。大学でオリンピックを目指す走り高跳び選手・藤堂遥(中条あやみ)は事故により車椅子生活になる。翻訳家の母(大塚寧々)は家にひきこもる遥を心配し、子供の頃に通っていた宮本(小澤征悦)のカヌー教室へ連れ出す。そこで遥は教室の子供たちや義肢・装具のエンジニア颯太(杉野遥亮)と出会い、やがてパラカヌーを始めるが…。パラカヌーへ転身した実在の選手・瀬立モニカが着想になっているらしい。綺麗にまとまり、ふつーに感動的。それ以上はないが、ちゃんと出来てるかな。脚本の土橋章宏がパラカヌー日本代表選手で基本がちゃんと描けていて文句ない。水上からの視点の映像はもうちょっと工夫が欲しかった。選手ほどの上腕三頭筋が発達してないが、中条あやみは終始クールでまあ悪くない。

https://suijo-movie.jp/

「ドクター・デスの遺産 BLACK FILE」

深川栄洋監督、中山七里原作「ドクター・デスの遺産」。捜査一課の刑事の犬養(綾野剛)、高千穂(北川景子)は少年・馬籠大地の通報からその父である肺癌患者の心不全を疑う。さらに安楽死を請け負う"ドクター・デスの往診室"というサイトから、聞き込みや似顔絵からホームレスの寺町、元看護師の雛森 めぐみへと捜査を伸ばしていくが…。原作は未読だけど、刑事犬養隼人のシリーズになっていて沢村一樹主演でドラマ化はされているみたい、未見。全体には、安楽死みたいなセンシティブな問題をかるーく雑なエンタメにしてしまう無責任感に満ちている気がする。原作はもうちょっと安楽死について深く考察して描いているんだろうとは思うが、色々な制約からこうなってしまったのかもしれない。綾野剛北川景子のコンビも昭和の刑事みたいな演技。俳優の一部をシークレットにしているみたいだが、登場してすぐに分かるがなあ。犯人の正体もその行動も安い2時間ドラマみたいな感じ。腎不全の娘・沙耶香の存在も薄っぺらいな。

http://wwws.warnerbros.co.jp/doctordeathmovie/

「ストックホルム・ケース」-Stockholm-

ロバート・バドロー監督。1973年ストックホルム 、ラース(イーサン・ホーク)はサブマシンガン武装してクレジット銀行に強盗に入り、ビアンカ(ノオミ・ラパス)たちを人質にする。要求として、刑務所に収監中の仲間グンナー(マーク・ストロング)の保釈、現金、逃走車を要求するが…。ストックホルム症候群の語源になったノルマルム広場強盗事件の実話ベース。なんだが、登場人物の心理的な変化がまったく納得できないので、物語にノレない。いい題材だけにまったく勿体ない、しっかりと心理の流れを納得させてくれれば面白くなっただろうに。警察や首相の行動もイマイチ納得感がないのも残念。役者もイーサン・ホークノオミ・ラパスといいトコを揃えているのに。

http://www.transformer.co.jp/m/stockholmcase/