電子竹林:Blog

はてなダイアリーより引っ越し済み、主に映画

「ザ・バッド・ガイズ」-The Bad Guys: Reign of Chaos-

ソン・ヨンホ監督。護送車が襲撃され凶悪犯罪者が逃走。服役囚による捜査を行なっていた特殊犯罪捜査課、それを指揮していたオ・グタク(キム・サンジュン)はふたたび伝説の拳パク・ウンチョル(マ・ドンソク)、詐欺師クァク・ノスン(キム・アジュン)、元警察官コ・ユソン(チャン・ギヨン)たちを集めるが…。服役囚で捜査するってちょっとワイルドセブンみたいな話。敵もキャラが多く、それぞれに背景があって複雑、ちょっと消化不良な感じもする。アクションものとしてはまあまああ見られるが、マ・ドンソクの使い方としてはちょい平凡かなあ。キャラがちょっと固定されすぎな印象がある。日本のヤクザの進出、警察上層部の問題などもちょっと平凡かなあ。日本のヤクザはヘンすぎ。監督の作品では「鬼はさまよう」ほどの切れ味はなかったかな。

http://www.thebadguys.jp/

「ノマドランド」-Nomadland-

クロエ・ジャオ監督、ジェシカ・ブルーダー原作「ノマド 漂流する高齢労働者たち」。2011年1月31日、経済危機の影響でUSジプサム社はネバダ州エンパイアの工場を閉鎖、街が地図から消える。60代のファーン(フランシス・マクドーマンド)は家を手放し、自分で改造したワンボックスカーでの車上生活を送りながらアマゾンの配送センターなどで働いていた…。ベネチアで金獅子賞、トロントで監督賞、アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞というのも納得の出来。原作はドキュメンタリー、それを無理に物語として展開させずに静かに描写することにより深みが出ている。米国の社会の現実を、悲痛な視点でもなく美しい自然の中の映像で淡々と描くことによって心が揺り動かされる。それが中国人女性監督というのがまた驚かされる。ノマドに高齢者が多いっては驚きだが、考えてみると当然か。鈴木清順主演のドラマ「みちしるべ」を思い出した。日本でも地方の街が消え、似たことが起きることは十分に予想される。フランシス・マクドーマンドの名演は当然だが、実際のノマドであり原作に登場するリンダ・メイとスワンキーの自然な演技を引き出しているのは素晴らしい。

https://searchlightpictures.jp/movie/nomadland.html

「パーム・スプリングス」-Palm Springs-

マックス・バーバコウ監督。カリフォルニアのリゾート地パーム・スプリングス、エイブとタラの結婚式、花嫁タラの姉で介添人サラ(クリスティン・ミリオティ)は出席者ナイルズ(アンディ・サムバーグ)と親しくなる。砂漠で二人きりの時、謎の男ロイ(J・K・シモンズに襲われ洞窟に逃げ込むが、目覚めると結婚式当日の朝に戻っていた…。サンダンスでのプレミア上映というトコが期待どころ。タイムループ+恋愛モノ、という設定はちょい飽き飽きしているが、結婚式当日というのは設定は変化があっても面白い。主演のアンディ・サムバーグ、クリスティン・ミリオティはダメ人間な感じが悪くない。ラストへの展開はちょっと面白いが細部はかなり適当な印象。まあタイムループってこと自体がファンタジーだからいいんだけど。タイムループって基本、同じロケーションだから低予算で作れるって思った。長編監督デビュー作品としてはまあいいかな。

http://palm-springs-movie.com/

「劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班」

橋本一監督。2021年、長期未解決事件捜査班の三枝(坂口健太郎)、桜井(吉瀬美智子)はハイヤー暴走による政府高官死亡事件を疑い、2009年の政務官の事故も一連の事件だと調査を始める。そして23時23分、再び過去の大山(北村一輝)と無線機が繋がるが…。。韓国版「シグナル」はちょっと観てるけど日本版はまるで未見なのでパスしようと思ったが、時間の都合上見てしまった。まあ、ドラマ版見てなくても人物配置や設定はわかる。そもそも、この時間軸の使い方がイマイチ納得性なくて不満なのだけど、まあそれを無理に納得すればドラマとしてはいいかなあ。2時間ドラマのレベルだけど。過去の毒ガステロ事件、内閣官房長官(鹿賀丈史),、刑事部長・青木(伊原剛志)、ジャーナリストの小泉ミチル(奈緒)と物語を広げたのはいいけど、ちゃんと収束できてるかというと、ちょっと曖昧かなあ。坂口健太郎はアクションは頑張っていた。北村一輝の活躍が少ないのが残念。

https://signal-movie2021.jp/

「砕け散るところを見せてあげる」

SABU監督脚本編集、竹宮ゆゆこ原作。幼い頃の父の死により、ヒーローを夢見る高3の濱田清澄(中川大志)は、一年の蔵本玻璃(石井杏奈)に対するイジメを目撃し彼女を助けようとする。親友の玄悟(井之脇海)、同級生・尾崎(松井愛莉)、その妹(清原果耶)が見守る中、玻璃は清澄に心を開いて行くが…。原作未読。SABUの中の映画では一番好きかも。イジメを背景にした高校生恋愛モノと思わせて、意外な展開。でもやっぱり恋愛モノとして成立しているし、捻ったヒーローものでもある。石井杏奈は素顔あんまり出ないけど、いい感じの存在感。堤真一も気持ち悪くてイイ。最後のところ、分かりにくい表現だけど原作ではどうしているのか気になる。

https://kudakechiru.jp/

「ザ・スイッチ」-Freaky-

クリストファー・ランドン監督。気弱な女子高生ミリー(キャスリン・ニュートン)は父を亡くし警官の母(ケイティ・フィナーラン)と二人暮らし。友人はナイラ(セレステ・オコナー)、ジョシュ(ミシャ・オシェロヴィッチ)だけ、憧れのブッカー(ユリア・シェルトン)には声をかけられないでいる。その頃、周辺ではブッチャー(ビンス・ボーン)が謎の短剣での連続殺人を続けていたが…。女子高生と殺人鬼の入れ替わりモノ。「ハッピー・デス・デイ」の監督でスラッシャー映画、かなりのスプラッタもの。入れ替わりによる性格表現のうまさとか、キャラの性格の出し方、伏線など色々と映画的に上手い。「ハッピー・デス・デイ」を思い出させる。友人たちの使い方、警官の母など、上手く物語をドライブさせている。短剣とか、設定は結構テキトーだけど。ビンス・ボーンは1999年版「サイコ」 - Pshycho - のノーマン・ベイツ役の人なのか、今までで一番印象的な役かも。

https://theswitch-movie.jp/

「サンドラの小さな家」-Herself-

フィリダ・ロイド監督。アイルランド、サンドラ(クレア・ダン)は二人の娘を連れ虐待夫の元から逃げ出す。公営住宅は長い順番待ち、仮住まいから抜け出せないサンドラは、清掃人として働く家の医者ペギー(ハリエット・ウォルター)、建設業者エイド(コンリース・ヒル)たちの助けを借りてセルフビルドの家を建てることにするが…。DV、貧困、住宅問題、シングルマザーと社会問題を真正面から取り上げヒューマンドラマにしているところが、「家族を想うとき」「わたしは、ダニエル・ブレイク」ケン・ローチみたいな印象。憎たらしい夫の悪役ぶり、優しい仲間の味方ぶりなど分かりやすい構成なところも似ている。家の作り方をもうちょっと見たかったけど、そこは結構省略されているので残念。基礎は鉄筋なしでいいのかとか、断熱性とか防水とか、あれでいいのかちょっと心配だが、セルフビルドの家ってのは夢がある。予算は人件費別の、材料費のみで35000ユーロだから結構かかるなあ。

https://longride.jp/herself/