電子竹林:Blog

はてなダイアリーより引っ越し済み、主に映画

「梅切らぬバカ」

和島香太郎監督。占い師の山田珠子(加賀まりこ)と知的障害のある息子の忠男(塚地武雅)の二人暮らしの隣家に、里村茂(渡辺いっけい)、妻・英子(森口瑤子)、息子・草太(斎藤汰鷹)が引っ越してくる。親は忠男を迷惑がるが草太は仲良くなる。そして、珠子は将来のために共同生活のグループホームに忠男を入れるが…。加賀まりこ自閉症の息子・塚地武雅。それほど演技派とは思えないが、期待以上にこのコンビが良かった。物語としては平凡ではあるのだが、二人のキャラに助けられてた感じ。まあちょっと能天気なトコはあって、なんか松竹の人情喜劇みたいな雰囲気は残るが、全体には悪くない。「月曜日のユカ」の加賀まりこがこういう映画の主役になる日が来るとはなあ、などとしみじみと思ったりしたが。

https://happinet-phantom.com/umekiranubaka/

「ディア・エヴァン・ハンセン」-Dear Evan Hansen-

ティーブン・チョボウスキー監督。精神に問題をかかえ友人もいないエヴァン・ハンセン(ベン・プラット)は、看護師で忙しく働く母(ジュリアン・ムーア)と二人暮らし。カウンセラーの勧めで書いた自分宛の手紙が、同級生コナー(コルトン・ライアン)に持ち去られてしまうが、直後にコナーが自殺。コナーの両親はエヴァンがコナーの親友だと誤解し、エヴァンは偽の思い出を両親に語ってしまう。それはSNSへ拡散し、コナーの妹ゾーイ(ケイトリン・デバー)、アラナ(アマンドラ・ステンバーグ)たちを巻き込みあるプロジェクトが始まるが…。元はトニー賞の舞台で、シリアスで重い話で心情的に繊細なのにミュージカルってトコにそもそも違和感があった。元は未見で知らないが、映画にするにはかなり無理がある印象。「普通の人々」をミュージカルをするぐらいの無理さを感じる。それぞれのキャラには問題があり、善悪つけられないところとか面白いので普通のドラマとして観たかった。結末の付け方も、うーんそれだけかあという感じだった。

https://deh-movie.jp/

「ミラベルと魔法だらけの家」-Encanto-

バイロン・ハワード+ジャレド・ブッシュ監督。南米コロンビア、争いを避け街から逃げてきた人々は、奥地で魔法に包まれたマドリガル家を中心に暮らしていた。一家の中、ミラベル(声:ステファニー・ベアトリス)だけは魔法のギフトを持てず、人を癒す料理の魔法の母フリエッタ(声:アンジー・セペダ)、花の魔法の姉イサベラ(声:ダイアン・ゲレロ)、怪力の姉ルイーサ(声:ジェシカ・ダロウ)たちと違っていた。イサベラは祖母アルマ(声:マリア・セシリア・ボテーロ)と疎遠になっていたが、魔法が弱くなっている危機を感じ、予知の魔法の叔父ブルーノ(ジ声:ョン・レグイザモ)を探すが…。ディズニー初の眼鏡プリンセス。「ズートピア」の監督に「イン・ザ・ハツ」の音楽って、これだけ超一流を集めてつまらない訳はない。かなり面白いのだけど、想像をはるかに超えてってほどの面さではないかな。特にスコアは面白みが薄いし、物語も平坦な感じがする。魔法の存在の意味も、薄すぎ。期待が高すぎるせいかもしれないが。一家の避難はコロンビアの「暴力の時代」を背景にしているんだろか。ところで、それぞれの魔法はあんまり実用じゃない気がする…。同時上映の短編はアライグマの「ツリーから離れて」。

https://www.disney.co.jp/movie/mirabel.html

「アイス・ロード」-The Ice Road-

ジョナサン・ヘンズリー監督。カナダのダイヤモンド鉱山で事故が起こり、作業員26人が地下に閉じ込められる。掘削装置を運ぶために、マイク・マッキャン(リーアム・ニーソン)とPTSD帰還兵の弟ガーディ(マーカス・トーマス)、運送会社のジム(ローレンス・フィッシュバーン)、先住民タントゥー(アンバー・ミッドサンダー)と鉱山会社のトム(ベンジャミン・ウォーカー)は三台のトラックで春のアイス・ロードを進む事になるが…。設定自体が、「恐怖の報酬」のパクリ感強いけど、まあ物語的にはハラハラドキドキあり、裏の陰謀などもあり、なかなかよく出来てるとは思う。CG多めでちょいとチャチな作りは気になる。まあ、「アルマゲドン」 の脚本家が監督脚本、って事で、上手くハラハラドキドキさせてくれるが後にはあまり残らない映画、ってのは納得できる。リーアム・ニーソンよりは脇役の方がいい感じだった。首振り人形の話は面白い、ホントなのか。

https://gaga.ne.jp/iceroad/

「聖地X」

入江悠監督。親が残した遺産で、韓国の別荘に暮らしながら作家を目指そうとする山田輝夫(岡田将生)のもとに、東京から妹の要(川口春奈)がやってくる。ある時、要は東京にいるはずの夫の滋(薬丸翔)を韓国の街で見つけ、追いかける。そこは江口(緒形直人)と忠(渋川清彦)が開店準備をしている日本料理店だったが、滋は記憶が曖昧でパスポートも持たず、また上司の星野(真木よう子)と東京にいることがわかるが…。「太陽」「散歩する侵略者」と同じ前川知大の劇団イキウメの舞台(未見)の映画化。予告編はかなりホラー映画な印象だけど、コミカルとミステリーっぽさもある所が面白い。この辺の感覚は前川知大っぽいところなのかなあ。チープさもあるが(唐突なダンスシーンとか)、不思議な感触を持っている。ホラーっぽさも面白いのだけど、そこは深く追求されないのはちょっと欲求不満になる。鏡とか水とかの表現も、設定じゃなくて単なる演出だったのか。韓国じゃなくても成立しそうだけどなんで全編韓国ロケにしたんだろう。そっちの方が安かった??

https://seichi-x.com/

「ずっと独身でいるつもり?」

ふくだももこ監督、おかざき真里原作。本田まみ(田中みな実)は、自立した女のエッセイが10年前に大ヒットし有名になったが、36歳の今、年下の男との結婚に不安を感じている。また、由紀乃(市川実和子)は本田まみのエッセイを糧に自立した女を体現し生き、彩佳(徳永えり)はインスタ主婦を続け、美穂(松村沙友理)はパパ活で生活していたが…。色々なエピソードは、日本の女性なら共感できるところが多いと思う。だからこそ、ちょっとステレオタイプに感じるところもある。そういう面白さはあるが、物語的には弱い。四人の女性を平行して描いているためか、軸となる部分が無いからかもしれない。ラストも平凡なところに収まってしまっている。葛藤感としては弱い。いろいろな男のダメぶりもちょっと平凡かな。役者としては筒井真理子だけ、出番少ないけど突出して存在感があった。

https://zuddoku-movie.com

「ひらいて」

首藤凜監督、綿矢りさ原作。地方都市、高三の木村愛(山田杏奈)は、同級生のたとえ(作間龍斗)が一年生の時から好きだったが、彼は人との関係を避けていた。ある時、たとえが糖尿病で友達もいない新藤美雪(芋生悠)と密かに交際している事を知り、美雪に近づくが…。原作未読。綿矢りさの原作を26歳の女性が監督脚本、ってトコがまずすごいと思った。首藤凜の映画は初めて観た。この人だからストレートに感性を出せたのかなあと思う。山田杏奈のイヤな感じの女子雰囲気がなかなかハマっていて、芋生悠の薄幸な感じとうまく対比できている。高校生モノは安直なのが多いなか、最近では素晴らしい出来かも。細かいエピソードもなかなかいい。今の高校生がこれを観てどう思うかは気になるところではある。萩原聖人のイヤな親感もうまく出ているなあ。

http://hiraite-movie.com/