電子竹林:Blog

はてなダイアリーより引っ越し済み、主に映画

「ボーはおそれている」-Beau Is Afraid-

アリ・アスター監督。ボー・ワッセルマン(ホアキン・フェニックス)は不安症でセラピスト(スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン)にもかかっていた。ボーは父親の命日に、母親モナ(パティ・ルポーン)の元へ出かけようとするが、数々のトラブルに見舞われる、電話で母が怪死した事を知り、さらに自動車事故に遭うが…。鬼才と期待されているアリ・アスターホアキン・フェニックス、……しかし、今回はなんだが微妙だな。水、交通事故、泥棒、演劇などなどと現実か夢か、混在したようなヘンな展開は、最後は上手くまとまっていくのだろうと思っていたが、結局はまとまらずに終わった。さまざまなモチーフは、いろいろと無理に解釈できないこともないけど、わかりにくい上にそこに意味を感じない。部分的にはいいところも多いんだけどなー。

https://happinet-phantom.com/beau/

「ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人」-Jeanne du Barry-

マイウェン監督。私生児として生まれたジャンヌ・ドゥ・バリー(マイウェン)は、美貌と知性で高級娼婦として貴族の男たちを虜にしていた。やがて、ルイ15世(ジョニー・デップ)の公妾の座につくが、マナーやルールに厳しいベルサイユ宮殿の王女たちに嫌われ、そして王太子マリー・アントワネット(ポーリン・ポールマン)がやってくるが…。ルイ15世の愛人の話を、女優が監督脚本主演して見事に成功させている…という事が話題になっていいはずだが、注目点はDV訴訟で米国映画に出られないジョニー・デップルイ15世をやっていることばかりか。でも、このルイ15世もかなり見事な演じ方で存在感がある。物語もいいし、ヴェルサイユのロケ、美術、衣装、メイクもすばらしく、18世紀の王室のしきたりなども面白い。観客は中高年の女性ばかりだった。ちなみに、ジャンヌ・ドゥ・バリーの前の公妾がポンパドゥール夫人。

https://longride.jp/jeannedubarry/

「身代わり忠臣蔵」

河合勇人監督脚本、土橋章宏原作。徳川綱吉の時代、旗本・吉良上野介(ムロツヨシ)からのイジメに、江戸城内で刃傷沙汰を起こした赤穂藩主は切腹。しかし、実は吉良も逃げ傷で瀕死の状態だったために、吉良家の家臣・斎藤宮内(林遣都)は上野介の弟・孝証を身代わりにしようと計画する。一方、赤穂の大石内蔵助(永山瑛太)も仇討ちを期待されていたが…。忠臣蔵に身代わりという要素を入れた設定はかなり面白い。これは原作の力か。ラストの方は、もう一歩ヒネリが欲しかった気がするが。観客の年齢層はかなり高め、時代劇という感覚で観にきたのかもしれない。演出はかなりチープで、TVドラマ的な安っぽい映像。そんな笑いは、まあ、年寄りには受けていたのでいいかも。女優陣は吉良家の桔梗(川口春奈)、高尾太夫(橋本マナミ)と出番少なめだったが、物語的にはしょうがないか。しかし、忠臣蔵も海外視点の「47RONIN」、西洋の騎士にした「ラスト・ナイツ」、経済モノにした「決算!忠臣蔵」、怪談を絡ませた「忠臣蔵外伝 四谷怪談」といろいろとあるなあ。

https://migawari-movie.jp/

「夜明けのすべて」

三宅唱監督、瀬尾まいこ原作。藤沢美紗(上白石萌音)はPMS(月経前症候群)で仕事を辞め、今はプラネタリウムなどを作る栗田(光石研)の会社で働いていた。しかし、転職してきたばかりの同僚の山添(松村北斗)の行動に怒りを爆発させてしまうが、山添もパニック障害である事を知る…。原作未読。主人公たちも地味な存在だし、大きな事件も起こらないが、最後には主人公はわずかに成長している、といった物語。PMSパニック障害の主人公、松村北斗上白石萌音はまあいい演技かなあ。PMSパニック障害もあまり深くは突っ込まずに、恋愛モノにもせずに、という作りは成功している。この二人以外は、みんな平和でいい人たち、というのがいいバランスを作っている。山添の元上司役の渋川清彦、従業員のオバちゃん役の久保田磨希などホンワカしていい感じ。中学生たちもアクセントになっている。

https://yoakenosubete-movie.asmik-ace.co.jp/

「カラーパープル」-The Color Purple-

ブリッツ・バザウーレ監督、アリス・ウォーカー原作。1900年代初頭、ジョージア州。横暴な父のもと、セリー(ファンテイジア・バリーノ)は妊娠し子供は養子に出される。セリーは父によりミスター(コールマン・ドミンゴ)と強制的に結婚させられ、さらに最愛の妹ネティ(シアラ)とも離れ離れになる。やがてセリーは歌手となったシュグ(タラジ・P・ヘンソン)、自立した強い女性のソフィア(ダニエル・ブルックス)と出会い、自分に目覚めて行くが…。1985年スピルバーグ版は、世間での評価は高かったが、それほど好きではなかった。今回のは歌は多いのだが、ミュージカル感は薄い。スピルバーグ版もそうだが、全体にはいい話であるし、黒人女性の自立は感動的ではあるのだが、どこかDVとか暗い面は上っ面になってしまって、最後には丸く収まり、いい話になっているのが違和感がある。今回はミュージカルで、その化粧感がさらに強く感じる。まあ、それも文化で、そうしないと、悲惨すぎるのかもしれないが。現地、当事者の考え方がイマイチ分からないな。音楽として気に入ったのはシュグの「プッシュ・ザ・ボタン」ぐらいかなあ。

https://wwws.warnerbros.co.jp/colorpurple/

「梟 フクロウ」-The Night Owl-

アン・テジン監督。1645年、李氏朝鮮第16代国王・仁祖の時代。盲目の鍼医ギョンス(リュ・ジュンヨル)は、その腕を買われ宮廷で働いていた。清により人質に取られていた世子の昭顕が帰国、昭顕の息子である幼い昭顕はギョンスを信頼していた。そして、昭顕が医局長により毒殺されたのをギョンスは知り、夜中、宮廷を逃げながら真実を暴こうとするが…。なかなかによく出来た朝鮮王朝を舞台にしたサスペンス。盲目の鍼医の主人公が宮廷で殺害犯人とされてしまい、ひたすら逃げ惑うという設定がなかなかイイ。古くは「暗くなるまで待って」、最近では「シーフォーミー」などがある盲目の逃走劇だが、また違うヒネった面白さがある。この盲目の謎も上手い。そこに複雑に政治闘争が絡んでくるのは、いかにも韓国宮廷モノ。ラストに向けてが史実に縛られてスカっと結末にならないのは、まあしょうがないだろうなあ。

http://fukurou-movie.com/

「ゴールデンカムイ」

久保茂昭監督、野田サトル原作。日露戦争203高地で戦い"不死身の杉元"と呼ばれた杉元(山崎賢人)は、明治末期、北海道の山奥で砂金採りをしていた。杉元はアイヌの金塊の隠し場所を刺青にした24人の脱獄囚の話を聞く。そして、杉元は野生のヒグマに襲われていたところをアイヌの少女アシリパ(山田杏奈)に助けられ、行動を共にするが、陸軍第七師団の鶴見中尉(玉木宏)、元新撰組土方歳三(舘ひろし)たちも金塊を追っていた…。原作ちょっと、アニメは大体。実写化の映画としてはまあまあだが、やっぱり日本のTVドラマのクオリティだなあ。チープな面も多い。キャラは確かにアニメにはそっくりなんだが、それぞれがコスプレっぽくて実写としてのリアル感がない。世間では原作そっくりという意見はあるが、このコスプレ感がスタンダードなのかなあ。まあ、それぞれ頑張ってはいるのは分かるけど。物語としては、まだまだ続く感じ。「キングダム」といい、日本のコミックのシリーズ化はアメコミ並みになっているな。

https://kamuy-movie.com/