電子竹林:Blog

はてなダイアリーより引っ越し済み、主に映画

「HELLO WORLD」

伊藤智彦監督。2027年、無限の記憶容量をもつ量子記憶装置アルタラによる歴史記録事業・京都クロニクルが推進されていた。ある時、内気な高校生の堅書直実(声:北村匠海)の前に10年後の自分だという男(声:松坂桃李)が現れる。直実が付き合う事になるクラスメイトで同じ図書委員の一行瑠璃(浜辺美波)の命を救うために、二人は作戦を実行するが…。「劇場版ソードアート・オンライン オーディナル・スケール」 の監督、近未来京都を舞台に「マトリックス」に「「インセプション」が混ざって青春恋愛アニメ、って盛り込みすぎな感じがそのまま消化不良感を表している。盛り込みすぎなのにエピソードは予想可能で単調、脇役キャラも少なく面白みがない。全体には、もうちょと面白くなったと思うんだけどなあ、ディティールが雑。制作はグラフィニカ、「正解するカド」の野崎まどが脚本、「けいおん!」堀口悠紀子がキャラクターデザイン。

https://hello-world-movie.com/

「アイネクライネナハトムジーク」

今泉力哉監督、伊坂幸太郎原作。マーケティング会社に勤める佐藤(三浦春馬)は、妻が出て行って意気消沈な藤間(原田泰造)のおかげで仙台駅前街頭アンケートに立つ事になるが、ちょうどヘビー級ボクシングのウィンストン小野(成田瑛基)の試合放送中。そこで本間紗季(多部未華子)と出会う。また、美容師の美奈子(貫地谷しほり)は客の板橋香澄(MEGUMI)から紹介された弟と電話だけの付き合いを続けていたが…。原作は未読だったが映画後にすぐに読む。大人数の交錯の仕方はいかにも伊坂、それが上手く映像になっているのは心地よい感じ。原作は色々な経緯がある短編の集まりでちょっととっちらかった感はあるが、映画の方がうまくまとめている印象。人とエピソードを適度に入れ替えている。斉藤さん(こだまたいち)のキャラは絶対に原作の方が面白いし、10年後の試合のエピソードも原作の方が好きだな。宣伝では三浦春馬多部未華子が主演な印象受けるけど、出番は結構少ないし印象も薄い。脇役の織田一真(矢本悠馬)の方がずっと目立っているかも。

http://gaga.ne.jp/EinekleineNachtmusik/

「いなくなれ、群青」

柳明菜監督、河野裕原作。人口2000人程度の階段島、魔女が支配し、自分がなぜこの島に来たかを知らない捨てられた人たちの島。七草(横浜流星)は、そこで同級生の佐々岡(松岡広大)、堀(矢作穂香)たちと平穏に暮らしていたが、ある時、幼馴染の真辺由宇(飯豊まりえ)が島に現れる…。原作は、第8回大学読書人大賞読書メーター 読みたい本1位、らしい。設定はかなり面白いのだけど、なんか延々と謎を引っ張った割にはすっきりしないで、最後はモヤモヤ感が残る。観た時は未読だった原作をすぐに読んでみる。やはり最後はモヤモヤ感は残る…というか、そういう話なんだな。原作では音楽祭がなくて見せ場が少ないので、むしろ映画は物語としては面白くしようと頑張っている感じがする。

http://inakunare-gunjo.com/

「ヒンディー・ミディアム」-Hindi Medium-

サケート・チョードリー監督。デリー下町で洋品店を営むラージ・バトラ(イルファン・カーン)、その妻ミータ(サバー・カマル)は教育熱心で娘ピアを進学校に入れるのに夢中。受験のために高級住宅地にまで引っ越すが失敗。さらに低所得者層の優先枠を狙い、今度は貧民街に引っ越すが…。インドのお受験映画、すでにインドも日本と同じような、あるいはそれ以上の受験戦争なのか。ハートウォーミングで非常に道徳的というのは他のインド映画と同じ感じ。その辺は成功しているし、感動的でもある。ラストも上手い落とし方。全体にちょっと長いが、本国版はもっと長いんだろうなあ。子役が微妙に可愛くないのだが、そこがリアルではある。

http://hindi-medium.jp/

「タロウのバカ」

大森立嗣監督脚本。戸籍もなく学校に通ったこともないタロウ(YOSHI)は、高校生のエージ(菅田将暉)とスギオ(仲野太賀)とつるんで遊んでいたが、あることから半グレの吉岡(奥野瑛太)の拳銃を手に入れてしまう…。障害者施設のシーンからも、色々タブー破って無茶やろうって気概は分かるが、そのタブーに逆に押しつぶされている感じがする。平凡な無茶でしかないし、その中に繊細さがないと全体にメリハリ付かない。菅田将暉、太賀の演技に比べるとYOSHIはちょっと演技が雑か。全体に長回しのシーンは結構好きなんだけど。「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」は似たような設定だけど、もっとパワーがあり繊細さがあったな。これは役者の技量の違いだろうか。

http://www.taro-baka.jp/

「ある船頭の話」

オダギリジョー監督、クリストファー・ドイル撮影監督。近くで橋の建設が進む山村の川辺、船頭のトイチ(柄本明)は渡し船の小屋に住み、たまに村の源三(村上虹郎)が遊びに来るような生活。ある時、上流から流れてくる少女(川島鈴遥)を拾い上げ助けるが…。ドイルが撮影ってのは見どころだが、繊細なとこもあるが結構雑なトコも多い。CGや合成もちょっと雑。初監督のご祝儀出演なのかチョイ役での出番が多く、伊原剛志浅野忠信村上淳蒼井優笹野高史草笛光子など。みんなちょっとだけ。永瀬正敏とその父役の細野晴臣は意外に面白い存在感。近くに橋が出来る渡し船、っていう状況だけなんだけど、それで話を上手く引っ張るのだからなかなか良い脚本ではあると思う。あんまり説明しない謎な展開は、ちょっとATGみたいに感じた。

http://aru-sendou.jp/

「ガーンジー島の読書会の秘密」-The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society-

マイク・ニューウェル監督、メアリー・アン・シェイファー+アニー・バロウズ原作「ガーンジー島の読書会」。第2次世界大戦直後の1949年、人気作家のジュリエット・アシュトン(リリー・ジェームズ)はある偶然による手紙から、ナチスドイツ占領下で始まったガーンジー島での読書会について知る。ジュリエットは婚約者のマーク(グレン・パウエル)を置いてガーンジー島へ出かけ、読書会のドーシー(ミキール・ハースマン)、アメリア(ペネロープ・ウィルトン)たちと出会うが、なぜか創設者エリザベス(ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ)は不在だった…。恋愛、ミステリー、歴史、本の雑学がうまい具合にミックスされ詰め込まれている感じ。それぞれが絡み合いながら、謎が解けラストへ収束していく感じが心地よい。終戦直後に生きる人たちの歴史的な感覚もいいし、ラストも上手い。島は観光地なのに綺麗な風景だけで宣伝要素が無いのは面白い。スタークが同性愛って話すは余計だな、まだ違法でアラン・チューリングが逮捕されたのは1952年。ともかくポテトピールパイは名前からしてまずそうで一度食べてみたい。

http://dokushokai-movie.com/