電子竹林:Blog

はてなダイアリーより引っ越し済み、主に映画

「ジョジョ・ラビット」-Jojo Rabbit-

タイカ・ワイティティ監督、クリスティン・ルーネンズ原作「Caging Skies」。敗戦間近のドイツ、10歳のジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)は母ロージー(スカーレット・ヨハンソン)と二人暮らし。ナチスに心酔し幻のアドルフ(タイカ・ワイティティ)と会話し、立派な兵士になるため友人ヨーキー(アーチー・イェーツ)とナチスヒトラーユーゲントのキャンプでクレンツェンドルフ大尉(サム・ロックウェル)に訓練を受ける。そしてある時、家にユダヤの少女エルサ(トーマシン・マッケンジー)を見つけるが…。もともとコメディ畑の監督ではあるが、コメディタッチの前半から、後半へのギアチェンジの仕方が見事。特に靴の使い方は素晴らしく衝撃的。不真面目、ブラック・コメディになりそうなのを上手くバランス取ってるかな。前半はもっと面白くなりそうだったけど、もうちょっとブラックに踏み込んでいいのに。中途半端なとこでレベル・ウィルソンなど活躍が少ない感じ。映画を観て原作読んだレビューが、超悪評の嵐。今ひとつダメな点が見えないが、これじゃナイ感、読まなきゃよかった、という強烈な感情が伝わる。翻訳されてないのが残念。

http://www.foxmovies-jp.com/jojorabbit/

「リチャード・ジュエル」-Richard Jewell-

クリント・イーストウッド監督、マリー・ブレナー原作「American Nightmare: The Ballad of Richard Jewell」。1996年五輪開催中のアトランタ、警備員のリチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)はコンサート開催中の公園で不審なバックを発見、多くの命を救い英雄となる。同居している母(キャシー・ベイツ)もそれを喜ぶが、FBIトム・ショウ(ジョン・ハム)はリチャードを第一容疑者とし、その情報を地元紙の記者キャシー(オリビア・ワイルド)が報道。リチャードは、旧知の弁護士ワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)に助けを求めるが…。全体には淡々と丁寧に描いていて、イーストウッドの上手さを見せてくれる。事件は緊張感あるけど、その後の盛り上がりは少ないのはしょうがないかな。実話であり、犯人よりはマスコミとFBIが悪役。悪役周りの表現はちょっとステレオタイプかもしれない。行動の背景となる描き方が少なく、深みがちょっとないというか納得感がないのが残念。日本ではやはり松本サリンを連想してしまう、特に理系としてはマスコミの扱い方が恐ろしかった。ところでマカレナ・ダンスを久しぶりに見たよ。あの頃の話なのか。

http://wwws.warnerbros.co.jp/richard-jewelljp/

「ラストレター」

岩井俊二監督脚本原作。宮城県、岸辺野裕里(松たか子)は姉・未咲の葬儀に娘・颯香(森七菜)、姉の娘・鮎美(広瀬すず)たちと参列するが、そこで預かった同窓会の招待状のために初恋の相手・乙坂鏡史郎(福山雅治)と再会する。かつて、高三で転校してきた鏡史郎(神木隆之介)は、同じ生物部の二年だった裕里(森七菜)を通し、姉で生徒会長の未咲(広瀬すず)へのラブレターを渡していた…。映像も綺麗で役者も悪くない。けど安定しすぎて面白みは薄いかな。意外な展開は多いけど、岩井俊二の毒っぽさはほとんどない。「Love Letter」には超えてないどころか近づけてもいない。物語としては、未咲の人生が見えてこないトコが一番不満かな。映像は概ね好きなんだけどドローンになると急激に絵が悪くなるのが邦画クオリティだなあ。中山美穂豊川悦司と「Love Letter」の面々が登場するのは嬉しいが、あんまり面白味がある役じゃなかった。そういえば、鈴木慶一も「Love Letter」出ていたんだっけ。あと、仲多賀井高校、岸辺野、波戸場、とちょっと奇妙な名前をなぜ使っているんだろうか??

https://last-letter-movie.jp/

「ペット・セメタリー」-Pet Sematary-

ケビン・コルシュ+デニス・ウィドマイヤー監督、スティーブン・キング原作「ペット・セマタリー」。メイン州、医師ルイス(ジェイソン・クラーク)は、妻レイチェル(エイミー・サイメッツ)、娘エリー(ジェテ・ローレンス)、幼い息子ゲイジと共に都会を離れ田舎へ移り住み、大学の医務室で働く事になった。隣人はジャド(ジョン・リスゴー)。そして新居の裏には動物の墓地ペット・セメタリーがあった…。原作はキングの中で個人ベスト。表面的ではない、心底、恐ろしい話だと思った。1989年映画化は雑な演出で映像も冴えないしテンポも悪く、かなりの不満な出来だった。今回のは原作から外れないが上手く改変して、ホラーとしてテンポよく展開させている。予算不足かチープなとこも幾つかあるが、ほぼ満足。娘役の演技が怖くていいし、レイシェルの姉なんか怖すぎ。ここだけで一本作れそうな怖さ。ちょっと「シャイニング」意識した映像がいくつかあるが、オマージュって事なんだろうか。しかし、この敷地はどんだけ広いんだ^^

https://petsematary.jp/

「記憶屋 あなたを忘れない」

平川雄一朗監督、織守きょうや原作。大学生の遼一(山田涼介)は年上の恋人・杏子(蓮佛美沙子)にプロポーズするが、翌日から彼女と連絡が取れなくなり、数日後に再会した杏子は遼一だけの記憶を失くしていた。都市伝説と言われる記憶屋に関わるのは二回目の遼一は、弁護士・高原(佐々木蔵之介)に相談して、幼馴染の真希(芳根京子)、弁護士助手の七海(泉里香)とともに記憶屋について調査するが…。予告編から想像する設定は「ツナグ」と似ているので、監督が平川雄一朗なのはぴったりで期待だった。結果的には出だしから予想通りにしか展開せずに驚きが一片もないのが残念。かなり退屈だった。それぞれのキャラも薄いし、記憶屋ってものの存在がちょっと薄っぺら過ぎるんじゃないかなあ。これは原作のせいか。記憶って事をあまりに疎かに扱ってんじゃないの。まるでスマホのメモリみたいな扱いで、その考え方の方が怖い。「エターナル・サンシャイン」に設定が似た所があるけど、これほど印象が違うとは。あんまりホラー要素ないけど日本ホラー小説大賞読者賞、未読。山田涼介はパッとしないとけど芳根京子は悪くない。「累 かさね」 「心が叫びたがってるんだ。」の時よりはずっといい。

http://kiokuya-movie.jp/

「シライサン」

安達寛高(乙一)監督。瑞紀(飯豊まりえ)は友人が前の前で、春男(稲葉友)は弟がアパートで、不可解な心不全で死亡するという事件が起こる。死んだ二人は旅行中に旅館で、酒屋の渡辺(染谷将太)からある怪談を聞いていた事が分かる。そして、ライターの間宮(忍成修吾)も不可解な死に興味を持ち調べ始めるが…。全体に「リング」そのままの構図で展開して、それも上っ面だけで恐ろしく退屈。民族学社会学は雰囲気だけで中身なし。せめてSNS絡みの話と民俗学者はもうちょっと掘り下げて良かったんじゃないかな。今の人は「リング」なんか誰も知らないのか、って思った。そしてシライサンが現れてもまったく怖くないのに驚いた。ゆるキャラかと思ったよ。事前にアプリをインストールしておけば「イヤホン360上映」で楽しめたらしいが、知らなかった。残念。「貞子3D2 スマ4D」の時ほど、派手な使い方じゃないみたいだけど。

http://shiraisan.jp/

「フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて」-Fisherman's Friends-

クリス・フォギン監督。英国コーンウォールの港町ポート・アイザック、音楽マネージャーのダニー(ダニエル・メイズ)は友人と旅行にやってきたが漁師たちのバンド「フィッシャーマンズ・フレンズ」のライブを偶然に聞き、契約交渉を始める事になる。ダニーはオーウェン(タペンス・ミドルトン)の経営するB&Bに泊まりながら、その父でメンバーのジム(ジェームズ・ピュアフォイ)、ジェイゴ(デビッド・ヘイマン)、リードヴィル(デイブ・ジョーンズ)を説得しようとするが…。実話ベース。漁師たちの歌というのが荒っぽいけど味があってなかなかいい。船で、酒場で、浜辺でと、色々なシチュエーションでの歌のシーンが面白い。あとでYouTubeで本物を聞いてみたけど、本物の方が微妙に上手すぎる感じで、映画の方が好きかも。物語的には単純であるが悪くない。「わたしは、ダニエル・ブレイク」のデイブ・ジョーンズが元気に出ているので嬉しい。

https://fishermans-song.com/