電子竹林:Blog

はてなダイアリーより引っ越し済み、主に映画

「ボヤンシー 眼差しの向こうに」-Buoyancy-

ロッド・ラスジェン監督。14歳のチャクラ(サーム・ヘン)は、カンボジアの貧しい田舎での農作業から逃れるため家を出て、タイへ稼ぎに来るが密入国のブローカーに金が払えず奴隷として漁船に乗せられる。そこは劣悪な環境で船長に支配され、拷問、殺人が日常的な場所だった…。全編、かなり壮絶、重苦しい展開。「蟹工船」 と比べても地獄のレベルがまったく違う。これが取材から作られた話だというのが、重苦しさを倍増させる。"ドッグフードになる"って一言だけで、この地獄と我々の世界は無関係ではない、繋がっていると考えさせる巧さ。初長編作とは驚きのオーストラリア人監督。ラストのまとめ方もうまいなあ。 https://buoyancy-movie.com/

「ぐらんぶる」

英勉監督、井上堅二+吉岡公威原作。島の大学へ入学した伊織(竜星涼)は、ダイビングショップを経営するおじの登志夫(高嶋政宏)の家に居候することになり、従姉妹の千紗(与田祐希)と再会する。が、登志夫は記憶がとび校内で全裸で目覚め、また全裸の耕平(犬飼貴丈)と会い、やがてダイビングサークルPeek a Booまでたどり着くが…。原作未読、英勉監督なので期待薄。まあ予想通りのイマイチ感、チープ感。なんか登場人物ほとんどの滑舌が悪すぎて何言ってんのか分からないのも困ったところ。矢本悠馬がとても流暢に感じる。水中撮影もイマイチ綺麗じゃないし。これでは「映像研には手を出すな!」は心配だなあ。その後、原作読んだけど、印象は変わらないかな。

http://wwws.warnerbros.co.jp/grandblue/

「銃 2020」

武正晴監督、中村文則原作脚本。東子(日南響子)はストーカーの富田(加藤雅也)を振り切り雑居ビルに逃げ込むが、そこで和成(佐藤浩市)の店からの血痕と拳銃を見つける。東子は拳銃を持ち帰り、大家や母の瑞穂(友近)を殺すことを考えるが、やがて刑事の刑事(吹越満)が東子の家へやってくる…。2018年の「銃」 を監督、制作、原作同じで再映画化。原作未読。主人公の男を女に変えたり、設定はかなり違うが、全体のテーマもテイストはかなり似た感じ。2年で再映画化はまったく新鮮味がないなあ、やはり。ラストのまとめ方も適当。日南響子は前作のトースト女役。武正晴監督は、「イン・ザ・ヒーロー」「百円の恋」 までは良かったけど、その後は好きなのが無いなあ。

https://thegunmovie.official-movie.com/

「ステップ」

飯塚健監督、重松清原作。武田健一(山田孝之)は妻を亡くし、2歳の娘・美紀(中野翠咲)を一人で育てながら仕事を続けていく決心をする。保育園のケロ先生(伊藤沙莉)、義父(國村隼)、義母(余貴美子)に助けられなが美紀を育てて行くが…。重松清の原作はかなり、彼の中では二番目ぐらいに好き。原作と基本同じだけどエピソードはそれなりに変えている。泣けるように作っているのは同じ感じか。伊藤沙莉のケロ先生はかなりイメージあっていた。監督は「全員、片想い」 でも伊藤沙莉をうまく使っていたので相性いいんだろうな。俳優陣はそれなりにいいのだけど、広末涼子の奈々恵はちょっとイメージ違うし、演技的にもイマイチ。子役は美紀(6~8歳)の白鳥玉季が圧倒的に可愛くて存在感がある。その後の美紀(9~12歳)の田中里念が平凡に感じるぐらい。東京近郊感あるめじろ台の陸橋や坂の使い方がいい。カレンダーや壁の落書きも映像的にうまく使われていて、この辺は映画らしい良さが出ていた。

https://www.step-movie.jp/

「ブレスレット 鏡の中の私」-La fille au bracelet-

ステファン・ドゥムースティエ監督。16歳の少女リーズ(メリッサ・ゲール)は親友のフローラ殺害の疑いで逮捕。2年後、リーズの裁判に父(ロシュディ・ゼム)、母(キアラ・マストロヤンニ)、弟は出廷するが…。16歳の娘が親友を殺人の罪での裁判劇、という話だけど、結構モヤモヤ感が残る展開でそれが最後まで続く。あんまりすっきりしない。結局は16才の娘はよく分からんなあという印象で、それがポイントなのか?? うーん。フランス映画らしいといえばそうなんだが。子役の弟が自然なんだが演技なんだか、子役っぽさがなくてすごい。ブレスレットとは逃亡防止のGPS足輪のこと。最後のワンカットはいいと思った。

https://bracelet-movie.com/

「剣の舞 我が心の旋律」-Tanets s sablyami-

ユスプ・ラジコフ監督。第2次世界大戦中の1942年、ソ連レニングラード国立オペラ・バレエ劇団のサーシャ(ベロニカ・クズネツォーバ)たちは初演「ガイーヌ」の練習中。アルメニア人の作曲家アラム・ハチャトゥリアン(アンバルツム・カバニン)は振付家ニーナたちによる変更に追われる日々。公開直前、文化省のプシュコフ(アレクサンドル・クズネトソフ)は結末を変え、士気高揚の踊りを入れる事を命じるが…。短時間で作曲された「剣の舞」の誕生秘話、ロシア映画…というだけの予備知識で観た。中盤まで見所も緊張感もあるが、全体には掴み所がない感じ。最後の「剣の舞」のトコはほんの少しだけ。主人公のアラム・ハチャトゥリアンも、バレエの舞台もアルメニアだと分かって全体像が理解できてきたが。ラストが特に、政治的かな。全体を思い返してみると、街頭のアコーディオン弾きに加わる所が一番いいシーンだったな。

http://tsurugi-no-mai.com/

「君が世界のはじまり」

ふくだももこ監督原作「えん」「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」、向井康介脚本。地方都市の高校生の縁(松本穂香)は成績トップ、友人の琴子(中田青渚)は成績最下位で男グセが悪く、今度はサッカー部の業平(小室ぺい)に一目惚れ。一方、同じ高校の純(片山友希)は母が出て行きショッピングモールで時間を潰す毎日だったが、そこで東京からの転校生・伊尾(金子大地)と知り合う…。「おいしい家族」 のふくだももこ監督と松本穂香で期待大。高校生の心のうちの微妙な葛藤を描く、繊細な演出と演技演がいい。共感できる。「台風クラブ」のテーマとモチーフが随所にある。偶然かもしれないが、それだけ「台風クラブ」の普遍性というものを感じる。BARBEE BOYの代わりのブルーハーツの使い方もパワーがある。BARBEE BOYSの方が好きだけど。松本穂香は相変わらず、力の抜けたいい具合の演技をするな。

https://kimiseka-movie.jp/