電子竹林:Blog

はてなダイアリーより引っ越し済み、主に映画

「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」-Avatar: The Way of Water-

ジェームズ・キャメロン監督。車椅子の元海兵隊員のジェイク・サリー(サム・ワーシントン)は惑星パンドラの一員として、先住民ナヴィのオマティカヤ族長の娘ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と結ばれた。子供たちはグレース博士の娘で養女キリ(シガニー・ウィーバー)、長男ネテャム(ジェイミー・フラッターズ)、次男ロアク(ブリテンダルトン))、人間である養子スパイダー(ジャック・チャンピオン)、末っ子トゥクたち。しかし、RDA社は鉱物資源のためマイルズたち傭兵をクローンとして再生し、パンドラの村々を襲う。そしてサリーの一家は海の民メトカイナ族のトノワリ(クリフ・カーティス)に助けを求めるが…。ちょい長すぎなトコを別にすればけっこう好き。物語のうまさは前作同様にかなり良く出来ている。異世界と人間、バーチャルをうまく融合している。モデリングレンダリングの技術進歩は目覚ましく、前作「アバター」よりは絵はずっと綺麗になっている。水中シーンが何より素晴らしい。これって水中でモーションキャプチャしているように見えるのだが、どうやっているんだろうと見ながら思っていたら、みんな素潜りで演技していたらしい。驚きの撮影だ。全体に、監督としては文化の細部を描きたくて、長くなってしまったのが分かるな。ところで、トゥルクル捕獲の砲の"日浦"の文字とか、日本と「ザ・コーヴ」を意味して明らかに批判しているんだが、この辺で意外に国内の反感はないみたいだなあ。まさか気づいてないって事はないだろうが。

https://www.20thcenturystudios.jp/movies/avatar2

「Dr.コトー診療所」

中江功監督、山田貴敏原案。日本西端の孤島、志木那島。19年前に東京からこの島にやって来たコトー(吉岡秀隆)は看護師の彩佳(柴咲コウ)と結婚、もうすぐ子供が産まれようとしていた。研修医・織田判斗(高橋海人)がやってきた頃、過疎高齢化の進む島では医療統合の話が持ち上がるが…。原作は全部読んでる、ドラマはほんのちょっとだけしか見ていない…ので、パスでも良かったんだがなあ。寅さんの満男が、寅さん晩年ぐらいの姿で出ているのが個人的にはシミジミとする(渥美清享年68歳)。全体には演出も撮影は安っぽく、社会問題を提議しているようで、最後は精神論になってる気がするなあ。台風、原(時任三郎)の息子・剛洋(富岡涼)のエピソードと無理に入れ込んだ感じが強い。まあ、同窓会映画かなあ。

https://coto-movie.jp/

「夜、鳥たちが啼く」

城定秀夫監督、高田亮脚本、佐藤泰志原作。売れない作家の慎一(山田裕貴)のもとに友人の元妻・裕子(松本まりか)が幼い息子アキラ(森優理斗)を連れて引っ越してくる。慎一は離れのプレハブで暮らす生活を送り、裕子はアキラが眠ると街へ遊びに出かけていたが…。原作未読。派手な展開はないが、じわじわと心に沁みてくる感じの映画。「そこのみにて光輝く」 と同じ原作者と脚本家で雰囲気は似てるんだけど、「そこのみ…」みたいなダラダラした感じはなく気持ちいいテンポ感が好き。しかし、佐藤泰志は他にも「海炭市叙景」、「オーバー・フェンス」「きみの鳥はうたえる」 と映画化が多い作家。あの人の小説は映像化してみたくなるのだろうなあ。山田裕貴は、人間味があっていままでの中で一番好きだ。

https://yorutori-movie.com/

「MEN 同じ顔の男たち」-Men-

アレックス・ガーランド監督脚本。ロンドンに住んでいたハーパー(ジェシー・バックリー)は夫ジェームズ(パーパ・エッシードゥ)を失い、心の傷を癒すために田舎町へやってくる。広大なカントリーハウスでしばらく暮らすことになるが、その管理人ジェフリー(ロリー・キニア)と同じ顔の男たちと村で出会い、また謎の影に追われることになる…。A24作品、「エクス・マキナ」のガーランドが監督脚本ということで期待の作品。サイコスリラーかホラーかもわからない展開で、どんどん謎が深まる。深まるだけで、最後は収拾できてない気もするが、まあ嫌いじゃない。MENって意味はいろいろと深くて考えさせられる。監督もインタビューで言っていたけど、図像学のシーラ ・ナ・ギグ、グリーンマンが何度も出てくる。この辺の意味はイマイチわからないなあ。

https://happinet-phantom.com/men/

「ラーゲリより愛を込めて」

瀬々敬久監督、辺見じゅん原作「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」。第二次世界大戦終戦直前の満州、山本幡男(二宮和也)、妻モジミ(北川景子)、三人の子供の家族はソ連軍の侵攻により避難しようとするが、幡男だけが取り残され、シベリアの強制収容所の捕虜となる。幡男は松田(松坂桃李)、元軍曹の相沢(桐谷健太)たちと移送先され、漁の最中に捕まった新谷(中島健人)、また松田の同郷の先輩・原(安田顕)と出会うが…。いい話ではあるが、演出はイマイチかなあというのが印象。特に感動的であるラストを引っ張りすぎているのは、逆効果な気がする。いい話だけに映画としては残念。ラーゲリというと教科書に出ていた梅崎春生赤帯の話」を思い出す。

http://lageri-movie.jp/

「ハッピーニューイヤー」-Happy New Year-

クァク・ジェヨン監督。年末を迎えるホテル・エムロス。マネージャーのソジン(ハン・ジミン)は15年来の友人スンヒョ(キム・ヨングァン)に告白できないでいた。ホテルのCEOヨンジン(イ・ドンウク)は、ハウスキーパーでミュージカル女優をめざすイヨン(ウォン・ジナ)と出会い、自殺を考える就活生ジェヨン(カン・ハヌル)は最後の贅沢でエムロスに泊まるが…。ホテルでの群像劇。豪華キャストでまあまあなエピソードもあるけど、全体にはまとまりがついてないかな。色々な結末があるのはいいが、どれも希望を持って最後に収束していくポジティブな楽しさが欲しい。「ラブ・アクチュアリー」あたりを見本にしているんだろうが遠く及ばない。米国映画の「バレンタインデー」もそういう印象だったな。群像劇なのに10日ぐらいの物語にしているのが、さらにテンポを悪くしているような気がする。エピソード的にはモーニングコールが一番好き。

https://gaga.ne.jp/happynewyear/

「あのこと」-L'evenement-

オドレイ・ディワン監督脚本、アニー・エルノー原作「事件」。中絶が禁止されていた1960年代のフランス。大学生のアンヌ(アナマリア・バルトロメイ)は労働者階級の貧しい家に生まれたが、努力して大学へ進学。しかし、アンヌは望まぬ妊娠に気がつくが…。2022年ノーベル文学賞のアニー・エルノーが原作、2021年ベネチア国際映画祭の金獅子賞と話題な作品、中絶賛否が話題な世の中の割には公開はマイナーな気がするが、そこが日本の映画館らしいかなあ。映画は当時のリアルな現実をひたすら描き、終始空気は重く、息苦しい。中絶、学位、出産というアンヌの葛藤が観客にのしかかってくる。その上に妊娠という時間制限があるのも、ドラマを重くしていてる。R15+だけど、男子中学生の授業で見せてもいいぐらいに社会勉強になるよ、これは。1989年のユーゴスラビア映画で、1950年代のベオグラードの話「ヘイ・バブリバ」を思い出した。

https://gaga.ne.jp/anokoto/