電子竹林:Blog

はてなダイアリーより引っ越し済み、主に映画

「DOGMAN ドッグマン」-Dogman-

リュック・ベッソン監督脚本。トラックで負傷していたドッグマンことダグラス(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)は、警察に連行され、精神科医エヴリン(ジョージョー・T・ギッブス)にその半生を語る。父と兄の暴力により犬小屋で暮らす少年のダグラス(リンカーン・パウエル)は、犬たちに救われ成長、やがて施設でサルマ(グレース・パルマ)から演劇を教わる。やがてキャバレーで働き始め、またギャングと対立することになるが…。リュック・ベッソンの監督作品としては20年ぶりぐらいに面白かった。昔のリュック・ベッソン復活と嬉しくなる。話は単純なんだが、謎を引っ張る構成も展開も上手く決まっている。主演のケイレブ・ランドリー・ジョーンズも、「ジョーカー」ホアキン・フェニックスぐらいの存在感。犬が超賢い、マコーレー・カルキンぐらい賢い。さまざまなアクション、エディット・ピアフのラ・フールを歌うシーンの美しさと、面白い映画の要素が満載。リュック・ベッソンの監督作品もまだまだイケると思わせた。

https://klockworx-v.com/dogman/

「ARGYLLE アーガイル」-Argylle-

マシュー・ボーン監督。エリー・コンウェイ(ブライス・ダラス・ハワード)は、アイススケートの大事故のあとに転身し、ベストセラー小説「アーガイル」の作家となる。エリーは愛猫アルフィーと列車で移動中、謎の男たちに襲われエイデン(サム・ロックウェル)と名乗るスパイに助けられるが、それはエリーの小説が現実のスパイ組織を示していたためというが…。スパイ・アクションもの軽いエンタメ映画の予測だったが、なかなかによく出来たエンタメだった。二転三転させる物語の展開は上手い、前知識なしで観るのが吉。監督は「キングスマン」の人だけど、無駄なスプラッタな残虐性はほとんど入って無い。死者は多いが血も出ない。無駄に美しい、数シーンのアクションが傑作。エリーの両親、アルフィー(サミュエル・L・ジャクソン)、小説と現実の人物の対比など、面白い構成。

https://argylle-movie.jp/

「52ヘルツのクジラたち」

成島出監督、町田そのこ原作。三島貴瑚(杉咲花)は海辺の一軒家に引っ越してきたが、そこで母親からムシと呼ばれ育児放棄されている少年(桑名桃李)と出会う。貴瑚は親友の美晴(小野花梨)、塾講師の安吾(志尊淳)との日々、上司で恋人の新名主税(宮沢氷魚)との過去を思い出すが…。本屋大賞の原作は未読。謎は多いのだが、なるほどなあと思わせる展開をさせる物語。育児放棄、虐待、DV、ジェンダーなどなどのハードな社会問題を詰めこんでいるため、終始、息苦しい雰囲気ではある。それでも内容的にはいい映画だ。「八日目の蝉」にイメージ重なるから成島出を監督にしたのは正解か。大事なポイントに盛大にネタバレしている公式サイトは無視して映画を観るのが吉。

https://gaga.ne.jp/52hz-movie/

「落下の解剖学」-Anatomie d'une chute-

ジュスティーヌ・トリエ監督。人里離れた雪山の山荘、住むのは人気作家の母サンドラ(サンドラ・ヒュラー)、夫ヴァンサン(スワン・アルロー)、盲目の息子ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)。ある時、ダニエルが倒れている父親を発見、転落死と思われたが、前日に夫婦喧嘩をしていたことからサンドラに疑いがかけられていく…。2023年カンヌでパルムドールというところは期待だったんだが、個人的には物語にはノレなかったかなあ。物語のポイントを掴めずに終わってしまった感じか。ミステリーとして観るのは間違いだろうし、家族や夫婦関係の物語として観るのが正しいかもしれないが、被疑者である女性の視点では観られないので、面白みが薄い気がした。パルムドールのポイントはどの辺だったのだろうか、個人的にはよく分からない。映画としては息子中心の視点で作ったほうが面白くなった気がするんだが…、それではパルムドールは取れないかも。

https://gaga.ne.jp/anatomy/

「マッチング」

内田英治監督脚本原作。ウェディングプランナーの唯島輪花(土屋太鳳)は、同僚の尚美(片山萌美)に勧められ、マッチングアプリのウィルウィルを始める。そこで出会った永山吐夢(佐久間大介)のストーカー行為に恐怖を感じた輪花は、ウィルウィルを運営する影山(金子ノブアキ)に助けを求める。その頃、ウィルウィルのアプリ婚をした夫婦を狙った連続殺人が起きていたが…。「ミッドナイトスワン」「異動辞令は音楽隊!」の内田監督でオリジナル脚本というのは期待はあったんだが…、個人的にはかなり残念な感じ。ミステリー的には、まあこうなるでしょうな展開。ヒネリはあるんだが、ちょっと酷い。人が死にすぎだし、それぞれの動機も納得性がまったくない。美知子(片岡礼子)、節子(斉藤由貴)の行動も理解しにくい。演出もイマイチで、特に土屋太鳳が叫ぶたびに絶望を感じた(日本映画界に)。

https://movies.kadokawa.co.jp/matching/

「コヴェナント 約束の救出」-Guy Ritchie's the Covenant-

ガイ・リッチー監督脚本制作。2018年、アフガニスタンタリバンの武器の隠し場所を探す米軍曹長ジョン・キンリー(ジェイク・ギレンホール)は、アフガン人の通訳アーメッド(ダール・サリム)を雇う。ある時、キンリーの部隊は襲撃に会い、アーメッドは100キロの山道を瀕死のキンリーを連れ、基地に帰る。七週間後、キンリーは回復し帰国するが、アーメッドの家族を助けるため再びアフガニスタンへ戻ることになる…。米兵と癖ありな通訳の交友と友情、脱出劇、救出劇。これだけで面白くなる要素は揃っているが、それをガイ・リッチーらしいスタイリッシュな映像とスピード感で見せてくれる。タリバンの追跡方法や、地元民との関係性など、リアル感がある。かなり好みの映画。ちょっと「キリング・フィールド」を連想する。アフガニスタンの脱出劇といえば、最近では「カンダハル 突破せよ」などがあるが、まるで面白さのレベルが違うな。

https://www.grtc-movie.jp/

「ダム・マネー ウォール街を狙え!」-Dumb Money-

クレイグ・ギレスピー監督、ベン・メズリック原作。ローリング・キティことキース・ギル(ポール・ダノ)は、赤いハチマキにネコのTシャツ姿で投資の動画配信をしていた。そのころ、店舗でゲーム販売をするゲームストップ社はヘッジファンドの大量空売りにより株価が暴落していたが、キースは全財産5万ドルをつぎ込み、またフォロアーもゲームストップ株を買い始めるが…。つい最近の出来事な気がするけど、ゲームストップ株が、もう映画になるなんて驚き。コロナ下の社会のいろいろ、redditによるネットワーク、悪役のヘッジファンド、弱者の個人投資家たち、以前のウォール街占拠の運動、タイミングよい株取引アプリ・ロビンフッドの存在、と描き方は様々な角度からなされて、なかなかに上手い。経済モノとしても面白く見られるし、社会派な側面もある。本物のRolling kitty、の方がカッコいいしオタクっぽくも無いと思うのだけど、なんでポール・ダノなんだろ。原作未読だが、ベン・メズリック「ラスベガスをぶっつぶせ」の人でもある。

https://dumbmoney.jp/