電子竹林:Blog

はてなダイアリーより引っ越し済み、主に映画

「クルエラ」-Cruella-

クレイグ・ギレスピー監督。母を失いロンドンに出てきたエステラ(エマ・ストーン)はジャスパー(ジョエル・フライ)、ホーレス(ポール・ウォルター・ハウザー)たちとコソ泥で生きてきたが、夢を諦めきれず有名デザイナーのバロネス(エマ・トンプソン)の元で働くことになる。やがてエステラは影でクルエラとして、過激なファッション・デザイナーになっていくが…。ディズニーアニメ「101匹わんちゃん」の悪役クルエラ誕生秘話。実写版の「101」グレン・クローズのクルエラも悪くなかったが、「ジョーカー」みたいにとことんヴィランの背景を追求した感じの映画。「101匹わんちゃん」を知ってた方が色々楽しいけど独立してもまあ分かる。1970年代ファッションと音楽がかなりイイ感じで心に刺さる。クィーン、アイク&ティナ・ターナー、ドアーズ、スーパートランプ、ビージーズなどなど。物語や人物像はかなり凝っているんだけど、編集のせいかなぜかテンポはイマイチ悪い感じがする。音楽がいいだけに目立つ。マーク・ストログが脇役で全然目立たなく存在していて、なんでと思っていたが、後半にかけて急に重要になる。

https://www.disney.co.jp/movie/cruella.html

「いのちの停車場」

成島出監督、南杏子原作。大学病院・救命救急医の白石咲和子(吉永小百合)は、ある事から金沢の父(田中泯)の元に戻り、在宅医療のまほろば診療所で働くことになる。院長は仙川(西田敏行)、看護師の星野麻世(広瀬すず)だったが、さらに元大学病院職員で医者を目指していた野呂(松坂桃李)も加わる。患者は老老介護の並木(泉谷しげる)と妻シズ(松金よね子)、半身麻痺のIT社長・江ノ原(伊勢谷友介)、末期癌の芸者・智恵子(小池栄子)、元高級官僚の宮嶋(柳葉敏郎)、ガン最初の囲碁棋士・祐子(南野陽子)、小児癌の萌(佐々木みゆ)たちと多彩だったが…。原作未読。訪問看護の現場での老老介護終末医療安楽死などの問題でかなりの社会派。原作が現役医師だけあって細かい設定はリアル。だけど、演技や演出がそれに追いついている感じはしない。15歳ぐらい年下の役をふつーにこなす吉永小百合はすごいと思うが、あんまり医者っぽくない。患者が色々で、ちょっと散漫な感じにはなってしまっている。みなみらんぼうは、存在は面白いがちょっと浮いていたかなあ。最後は難しい問題提議で、そこで切るのかー、とちょっと思った。

https://teisha-ba.jp/

「くれなずめ」

松居大悟監督。高校時代の帰宅部の仲間、吉尾(成田凌)、劇団の演出家・欽一(高良健吾)、そこの俳優・明石(若葉竜也)、唯一の家庭持ち・ソース(浜野謙太)、会社員・大成(藤原季節)、ネジ工場のネジ(目次立樹)は結婚式での恥ずかしい余興の後、二次会までの時間を持て余すが…。監督劇団ゴジゲンの舞台劇を映画化。荒っぽいけどエネルギーがあるのが、いつもの松居大悟監督らしいか。初監督作品の「アフロ田中」をちょっと思い出した。高校時代の友人と結婚式で再会ってのも同じだし。基本は一つのネタだけで最後まで持っていく。それでも、ほとんどダレ感はないかな。でも、舞台の方が面白そうだな、これは。脇役だけど、同級生・清掃委員の前田敦子がずっといい感じ。この数年は前田敦子にハズレなし^^。

http://kurenazume.com/

「ジェントルメン」-The Gentlemen-

ガイ・リッチー監督。米国生まれでオックスフォード大学留学中に、麻薬の世界に入りマリファナの帝国を築き上げたミッキー(マシュー・マコノヒー)、妻はロザリンド(ミシェル・ドッカリー)、右腕はレイモンド(チャーリー・ハナム)。ミッキーは総額500億円の大麻ビジネスを大富豪マシュー・バーガー(ジェレミー・ストロング)に売却しようとするが、そこに中国マフィアのドライ・アイ(ヘンリー・ゴールディング)、探偵フレッチャー(ヒュー・グラント)、タブロイド紙編集長ビッグ・デイヴ(エディ・マーサン)たちが絡んでいく…。犯罪とバイオレンスの群像を、複雑な構成の物語でありながらテンポよくスタイリッシュに展開していく。「スナッチ 」を連想させる上手さ。役者の魅力などはこっちの方が落ちるかなあ、「スナッチ 」からもう20年以上と考えると進歩はあまりない。コーチ(コリン・ファレル)の存在は地味かと思ったが、後半にかけて上手い。ビジネスと貴族との関係など大胆で面白いのは、ガイ・リッチーイングランドエドワード1世の末裔ってことの裏返しなのか。

https://www.gentlemen-movie.jp/

「ファーザー」-The Father-

ロリアン・ゼレール監督。ロンドンのフラットで一人暮らす81歳のアンソニー(アンソニー・ホプキンス)は、記憶が曖昧になる日々。娘のアン(オリビア・コールマン)は新たな介護人ローラ(イモージェン・プーツ)を手配する。もう一人の娘ルーシーの姿は見えない。そしてアンと結婚して10年という見知らぬ男(マーク・ゲイティス)が現れるが…。アカデミー主演男優賞まで存在を知らなかった映画。認知症の話だけど、終始サスペンスドラマのように怖い感覚。主人公の混乱と恐怖を観客にも体験させる構成が成功している。モリエール賞の最優秀脚本賞の戯曲「Le Pere 父」が元らしく、狭い空間と少人数で展開するが、その空間や人の使い方を逆手にとっていて最後まで上手い。小説家で戯曲家の原作者が監督やっているらしいが、初監督でこれが撮れるのは凄いな。認知症モノは多過ぎな気がするが、「おらおらでひとりいぐも」 「長いお別れ」「サクラサク」 「海辺のリア」みたいなオブラートに包んだ感じではなく、突き放している。厳しさでは「しわ」を連想した。認知症の主観で作ったのが何しろ上手いな。家具や装飾や間取りや小物や、細かい所に目がいかないと色々見逃して怖さが分からないと思う。

https://thefather.jp/

「名探偵コナン 緋色の弾丸」

永岡智佳監督、櫻井武晴脚本。東京で開催される4年に一度のスポーツの祭典WSG 、それに合わせ最高時速1000キロの真空超電導リニアが開発。そのスポンサー企業のトップが拉致される事件にコナン(声:高山みなみ)、蘭(声:山崎和佳奈)は巻き込まれるが、赤井秀一(池田秀一)とFBIも事件を追っていた…。本来は2020年の公開予定。東京五輪を盛り上げようとしているんだか、批判的なんだが分からない、このタイミングの微妙な乗っかり方の内容。まあ、そんなところは気にせずに、赤井ファミリーを軸に作ろうとしてるんだろうけど。物語的には最近の中ではよく出来るているかなあ。派手にするために、相変わらず物理法則は無視しているがそこはいいとして。赤井の狙撃は、狙撃技術というよりはオカルトみたいだな。蘭と小五郎とか脇役の活躍は少なかった。

https://www.conan-movie.jp/

「BLUE ブルー」

吉田恵輔監督脚本。負け続けのプロボクサー瓜田信人(松山ケンイチ)、妻は美容師の天野千佳(木村文乃)。ジムに新人の楢崎(柄本時生)が入ってきたころ頃、瓜田の誘いでボクシングを始めた後輩の小川一樹(東出昌大)には日本チャンピオンのチャンスが近づいてくるが…。ボクシング映画は多いし、いい映画の率は高い。「あゝ、荒野 前篇」 など最近でもいいし、ちょっと異色でも「百円の恋」とかかなり好き。この映画も、まったくダレるところがなく終始緊張感がある展開が上手い。挑戦や挫折など、心に沁みる普遍性がある物語なのか。新人の楢崎を入れたことにより上手くボクサーの世界を説明しているのもいい。ボクサーのバイト生活などの入れ方もリアル感があって好き。監督のオリジナル脚本。監督は「純喫茶磯辺」「麦子さんと」みたいなオフビートな作風かと昔は思っていたが、最近は「ヒメアノ~ル」とか「愛しのアイリーン」 と作風が変わってきて、今回はオリジナル作品で、こういう風なのが得意だし好みなのかもしれないなとちょっと思った。

https://phantom-film.com/blue/