電子竹林:Blog

はてなダイアリーより引っ越し済み、主に映画

パンデミック映画個人的ベスト5、ワースト3

久しぶりにテリー・ギリアムを観たので、「12モンキーズ」を思い出して選んでみた。純粋にパンデミックとの戦いの映画は、「コンテイジョン」 、「アウトブレイク」、TVドラマ「ホット・ゾーン」、 「感染列島」ぐらいしか思いつかない。近年、ウィルス・パニックというとほとんどがゾンビもの映画になっている気がする。「新感染 ファイナル・エクスプレス」「感染家族」「28週後…」「ワールド・ウォー Z」「アイアムアヒーロー」 などなど。細菌兵器などの設定だけで使われているのも多い。「疾風ロンド」 (新型炭疽菌、緊張感は超薄い)とか。

パンデミック映画ベスト5

パンデミック映画ワースト3

「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」-The Man Who Killed Don Quixote-

テリー・ギリアム監督。スペインで撮影中の若手CM監督トビー(アダム・ドライバー)は、偶然に手にいれたDVDから、10年前の学生時代に撮った「ドン・キホーテを殺した男」の撮影地の村へ出かけることになる。そこで、ドン・キホーテを演じた靴職人ハビエル(ジョナサン・プライス)、アンジェリカ (ジョアナ・リベイロ)たちと再会するが…。ミゲル・デ・セルバンテスによる「ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ」、「ロスト・イン・ラ・マンチャ」に描かれる今までの障害の連続とギリアムの挫折(構想30年!)、今回の完成作、と考えてみると、この二重三重の虚構と狂気の複雑な構成はなかなかに複雑怪奇で面白い。理解しにくいかもしれない。ドン・キホーテという病がまるで感染するように広がっていく。一番感染して重症なのはギリアム監督自身なのかな。中盤ややダレる感じがするのがかなり残念なんだが、最後の盛り上げからラストまではスピード感も迫力もあっていいなあ。上司ボス(ステラン・スカルスガルド)、その妻ジャッキ(オルガ・キュリレンコ)、ウォッカ王ミシュキン(ジョルディ・モリャ)も怪しくていいキャラ。なによりアダム・ドライバーはよくギリアムに付き合って完成まで持っていったな^^。ジョニー・デップではこうは行かなかっただろう。

http://donquixote-movie.jp/

「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」-Knives Out-

ライアン・ジョンソン監督脚本。世界的ミステリー作家で出版社創業者のハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)が85歳誕生日パーティの翌朝に遺体で発見される。当初、自殺と思われていたが、警察、探偵ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)は関係者を集め聴取を開始する。長女リンダ(ジェイミー・リー・カーティス)、その夫リチャード(ドン・ジョンソン)、リンダとリチャードの息子ランサム(クリス・エバンス)、亡き息子の妻ジョニ(トニ・コレット)、専属看護師マルタ(アナ・デ・アルマス)たち…。原作なしでオリジナル脚本のミステリー。監督は「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」が有名だが、個人的にはとにかく「BRICK-ブリック」が大好きなので、このミステリーにも納得。二転三転する物語が凄くよく出来ている。詳しくは書けないが、マルタの設定がとにかく面白く、ミステリーの論理パズルとしても重要な鍵になってくる。監督は、クリスティに捧げると言うけど個人的には横溝正史を3ひねりぐらいした感じだな。ダニエル・クレイグが名探偵、ってのも新鮮。ハーランの財産に群がる人々の感情、移民や人種、階級の描き方も社会派であり評価できる。最後のショットの構図がいい。

http://longride.jp/knivesout-movie/

「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」-Les traducteurs-

レジス・ロワンサル監督脚本。ミステリー小説「デダリュス」完結編の各国同時発売のため、出版社社長エリック・アングストローム(ランベール・ウィルソン)は、フランスのある洋館に9人の翻訳家を集める。作品のヒロインの姿をしたロシア語翻訳家カテリーナ(オルガ・キュリレンコ)、最年少の英語翻訳家アレックス(アレックス・ロウザー)、左腕を怪我しているスペイン語翻訳家ハビエル(エドゥアルド・ノリエガ)、反抗的なポルトガル語翻訳家テルマ(マリア・レイチ)、中国語翻訳家チェン・ヤオ(フレデリック・チョウ)たち。9人は隔離状態で、渡される毎日20ページを翻訳していくが、ある時エリックの元に原稿をネットに流出させるという脅迫が届く…。ダン・ブラウンの「インフェルノ」出版時に翻訳エピソードが元になっているらしい(脅迫・流出はされてないが)。閉鎖空間でのミステリーという、予告編の謎をはるかに超えて展開する面白さ。方法から動機まで、二転三転する畳み掛けるような展開が映画らしくて好き。文学から言語の雑学も楽しく、それはデンマーク語から中国語、プルーストからクリスティまで、言語や作家の世界が広がる。すべての時間を集中して見るべし。原題「Les traducteurs」は翻訳者の意。

https://gaga.ne.jp/9honyakuka/

「サヨナラまでの30分」

萩原健太郎監督。アキ(新田真剣佑)を中心とするバンドECHOLLはメジャーデビュー直前にアキの事故死により解散。その一年後、就活中の窪田颯太(北村匠海)は偶然にアキのカセットプレーヤーを拾い、再生すると颯太の体はアキのものになった。再生時間30分の間、アキはかつてのメンバー、カナ(久保田紗友)たちに会っていくが…。ファンタジー入った青春バンドもの。最近のでは「空の青さを知る人よ」を連想させる。北村匠海自体はミュージシャンもやっているので、段々と歌の上手さが出てくる展開はなかなかにいい。全体に歌のシーンはいいと思う。反面、それぞれの心情の描写はやや甘い感じもある。ファンタジーの中心でもあるカセットテープももうちょと深い意味付けが欲しい。でも、監督の前作「東京喰種 トーキョーグール」よりははるかにいい映画ではある。

http://sayonara-30min.com/

ネコ映画個人的ベスト10・ワースト5

あまりに前評判が悪い「キャッツ」が公開されたが、その記念という事で、ネコ映画ベスト10・ワースト5を作ってみた。ちなみに、特に猫好きではありません。

ネコ映画・個人的ベスト10

ネコ映画・個人的ワースト5

普通

未見

  • 旅猫レポート」
  • 「ネコとじいちゃん」
  • 「レンタネコ」 荻上直子監督
  • 「トラさん 僕が猫になったワケ」

「キャッツ」-Cats-

トム・フーパー監督。捨てられた白猫ヴィクトリア(フランチェスカ・ヘイワード)はロンドンの片隅で自由に生きるジェリクルキャッツたちと出会う。世話好きなマンカストラップ(ロビー・フェアチャイルド)、孤独なグリザベラ(ジェニファー・ハドソン)、グルメ猫バストファージョーンズ(ジェームズ・コーデン)、手品猫ミストフェリーズ(ローリー・デビッドソン)、汽車猫スキンブルシャンクス(スティーブン・マックレー)、かつての名優ガス(イアン・マッケラン)たち。そして年に一度、長老猫オールドデュトロノミー(ジュディ・デンチ)により新しい命を受ける猫を決める舞踏会が開かれるが、怪しい力を持つマキャヴィティ(イドリス・エルバ)がそれを狙っていた…。トム・フーパー監督は初長編「レ・ミゼラブル」以来のミュージカル映画化。ミュージカル版はロンドンで見てる、歌やセットの作りなど演劇的には結構好き。特に、Memoryのスポットライトの使いかたには心底シビれた。映画版は前評判超悪いけど、まあまあ満足かな。それほど悪評な理由になる理由がわからない。人間の裸に見えてるうちはかなりポルノっぽいが、猫に見えればキャッツの世界でしょ。CGを使った映像は部分的にはイマイチなとこあるけど。レベル・ウィルソンはもともとがエログロなキャラだからか、そのままだなあ。ちょっとやり過ぎな感じはあった。ヴィクトリアを軸にした整理の仕方は観客に親切。ジェニファー・ハドソンのグリザベラは出番少ないけど圧倒的に歌がいい、Memoryはさすがにシビレるほどイイ、感動的である。もうちょっとMemoryの余韻の作り方は工夫欲しかったが。

https://cats-movie.jp/